研究課題/領域番号 |
19K20372
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 邦生 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (50839131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒューマノイドロボット / 身体構造設計 / 全身動作実現 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒューマノイドの全身動作実現に向けた身体動作機能の具体的達成目標として,A.環境との多点・滑り・転がり接触等を伴う動作を行うための関節のトルク追従性,B.正確かつ高速に四肢を操作するための関節の角度・角速度追従性,C.ロボットが全身でダイナミックな動作を実現するための高い駆動出力/重量比の3項目を設定しそれらの実現を目指している. 研究計画は交付申請書の研究実施計画に示したi)~iii)の3段階で構成され,2020年度はii) 設計法に基づき身体構造を考案・開発し身体動作機能A~Cを達成することを検証することと,iii) 設計・開発したヒューマノイドを用いることで従来研究では挑戦できなかったようなダイナミックな動作や環境との接触動作を実現する全身制御則を解明することについて取り組んだ. まず,ii)の実施について2020年度までで提案する身体構造を用いてヒューマノイド研究プラットフォームの腕部の開発に取り組み,腕部機械構造の骨格系・駆動系の組み立てまで完了している.また本研究で提案している身体構造はワイヤ駆動により構成されるが,ワイヤ駆動はそのワイヤの伸びによりヒステリシスや非線形性が生じるため関節トルク・関節角度の追従性能(A・B)を向上しなければならない.本年度はA・Bの性能を向上するために単軸試験機によるデータ取得・分析・制御則改良を行った. 続いてiii)の実施については既に完成している脚部において行える歩行・走行動作に関する全身制御則の解明に取り組み,実機において高さ30mmの段差を含む不整地を歩行できることを確認している.さらに全身の鉛直方向の運動を扱える全身制御則を解明することで,跳躍のような瞬間的かつ単発的な動作だけでなく走行のようなダイナミックな動作を継続的に制御できるようになった.2020年度までで継続的な走行動作をシミュレータ上で実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に示したii)iii)に関して2020年度までに以下の成果をているため上記のような進捗状況とした. 計画時は2020年度はi)とii)に,2021年度にiii)に取り組む予定であったが,新型コロナウイルスの影響で大学での活動時間が制限されたため,iii)に関して取り組み,ii)におけるヒューマノイド研究プラットフォームの開発を部分的に2021年度行うこととした.iii)に関して具体的には研究実績の概要で述べたように走行のようなダイナミックな動作を継続的に行うための制御則をシミュレータ上で開発することで活動時間制限に対応した.また,制限解除後に実機において歩行動作が行えることまでは確認しており,その成果はRSJ2020において発表され国内における評価を受けている.しかしながら,活動制限下においてii)におけるロボットの開発に取り組むのは困難であったため,腕部の電装系の開発と頭部の設計製作は2021年度に行うこととし,2020年度は単軸試験機においてトルク・関節角度の追従性の向上に従事することとした. これらを鑑みて課題の進捗全体としてはやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べた通り,2021年度は本来2020年度に行う予定だったii)に関する開発を行う予定である.具体的には単関節試験機と脚部実験機の開発を通して得た詳細技術を適用しながら腕部と頭部を開発する. 現状では腕部の駆動系の組み立てのみ完了しているので,今後,腕部の電装や頭部の設計・組み立て・電装を行うことで,現在の脚部実験機の全身が完成する予定である.これにより2019年度に行った身体構造のモデル化と定式化を適用することで身体機能Cの評価を全身レベルで定量的に行えるようになると期待される. また,iii)に関して2020年度に開発した全身動作制御を実機にて取り組むことで,現在シミュ―レータにおいて実現している走行動作を実機にて実現できるようにハードウェアと制御則の完成度を向上する計画である.加えて2020年度に単軸試験機において向上した関節トルク・関節角度の追従性能A・Bを全身動作レベルで評価する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予算使用額の大部分は研究計画ii)が締めており,計画時では2019年度と2020年度に取り組みヒューマノイド研究プラットフォームの腕部と頭部を完成させる予定であったが,上述した通り新型コロナウイルスによる活動制限の影響でプラットフォームの完成が2021年度に延期されたために2020年度までの使用金額が減少し2021年度の使用額が生じた.従って,ヒューマノイド研究プラットフォームの腕部と頭部の開発と2021年度に行い完成させることで2020年度までに使用しきれなかった金額を使用する計画である.
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