最終年度は,(i) これまでの研究成果である「1台で多様な形態に変化できるロボット」から「1台で多様なタスクを実現できるロボット」への拡張,(ii) 同一のモジュールで,吸盤による吸着・グリッパによる把持・両者の同時実行,が可能な吸盤併用グリッパの開発,(iii) iiを活用することでフェンスのような格子状の面と掴み所の無い壁面,の異なる鉛直面を同一機体で登攀可能な鉛直移動形態の可変構成,の研究成果が得られた. 成果(i)として,前年度に開発した1台で人型と乗り物型に形態変化可能なトランスフォーマーロボットを基に,遠方からのドアの開閉状態の認識,バランス安定化を考慮した体当たり動作によるドアの戸締り,ドアストッパーの認識と取り除き,半ドアの検出と戸締りの最終確認,ドアの重量変化やドアクローザーの有無への対応,の多様な生活支援タスクを1台のロボットで実現可能となった. 成果(ii)として,開閉グリッパの支点に吸盤を取り付けて,吸盤の着脱を制御するワイヤ駆動機構を導入した吸盤併用グリッパを開発した.これにより,ロボットのエンドエフェクタとして,吸盤を活用した物体吸着,グリッパを活用した物体把持,両者を同時実行したパワーグラスプ,が可能となった. 成果(iii)として,iiの吸盤併用グリッパをロボットの右腕・左腕・尻尾の先に取り付けることで,フェンスと壁面の異なる鉛直面を同一機体で登攀移動可能となった.フェンスに対してはグリッパによる把持,掴み所の無い壁面に対しては吸盤による吸着を行うことで登攀を可能としている. 研究期間全体を通して,前半は不安定な搭乗面でのロボットのバランス制御法を提案し,後半ではロボットの移動形態を可変とする構成法,形態の変化だけでなく周囲へのタスク実現も可能なロボット,水平面に限らず鉛直面に対しても移動形態を変化させるアプローチ,の横断的な研究成果が得られている.
|