研究実績の概要 |
本課題の目的は,生活支援ロボットが道具や不定形物の操作法を人から学ぶための視覚システムの研究開発である.従来の視覚システムでは,観察対象が見えない際の状況推定が困難であった.一方で人間は,物が見え隠れすることをも活用し,重なったり入り込んだりする状況を認識できていると考えられる.そこで本課題では,人間の視覚に備わる,物の永続性に関する概念や視覚トンネル効果等の性質を参考に,観察対象が見え隠れする際の遮蔽情報をも視覚特徴として用いることで,上下・包含関係の変化を含む作業を獲得できる視覚システムを目指した.研究期間前半では対象を剛体に限定し,見えるか否かが二値で表される画像処理器を用いて,片付け作業を観察学習させる研究をおこなった.開発した視覚システム(Hierarchy-based Function Estimator, Hi-Fes)は,実演開始時に観察対象が見えない状況を含め,観察対象の遮蔽情報を活用し,作業目標の上下・包含関係および観察対象の道具的利用法の推定を可能とした.次に,教示された作業をロボットが再現するための作業計画・動作計画を実現し,ロボットによる作業再現実験によりHi-Fesを評価した.この過程では,人による見立て表現を解釈し活用するシステムも有効であった.期間後半には,Hi-Fesが不定形物を扱えるようシステムを拡張した.開発した画像処理器(Region-based hierarchy estimator, RHE)は,複数の不定形の観察対象領域を追跡すると同時に,領域同士の接触関係や,遮蔽・被遮蔽領域を推定する.最終年度である本年度は,RHEの改良およびRHEの出力をHi-Fesと接続するための研究をおこなった.不定形物の上下・包含関係の変化を含む作業の出力および不定形物の形状特徴の推定を可能とするとともに,論文化のための評価実験をおこなった.
|