研究課題/領域番号 |
19K20377
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
重宗 宏毅 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40822466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペーパーメカトロニクス / 自動立体構造形成 / ソフトアクチュエータ / ソフトロボット |
研究実績の概要 |
3Dプリンタやオープンソースハードウェアなど、機械要素・電子要素を簡便に作製する手法が台頭している。申請者は、簡便な構造形成手法として、インクジェット印刷によって紙が自律的に折れ曲がる構造形成法を提案した。本研究では、湿度応答性材料をインクに混合することで、湿度変化によって可逆的に駆動するアクチュエータを開発する。可逆的アクチュエータの開発は、1枚の紙に構造とアクチュエータを同時に印刷して、人の手を借りずに動く印刷紙ロボットの開発に繋がる。 本年度は、インクジェット印刷によって紙に運動性を与え、印刷された線に沿って紙を自律構造形成することに成功した。提案手法では、紙が折り畳まれる際のダイナミクスを変化させることで、一連の折り畳み動作をプログラムすることに成功した。印刷した溶液と紙の間の相互作用を利用して、インクジェットプリンタによって紙の動きをプログラムした。インクジェットプリンタは、指定された場所に溶液を塗布して作動部位を決定し、紙に塗布する溶液によって作動のタイミングを決定できる。印刷パターンや色など、プログラムコードのようなデジタルデータをもとに、自分で折る位置(場所)とタイミング(時間)を決めた。電気機械システムでは、組立、制御、エネルギー供給を別々に設計し、それぞれの目的に応じて適切なデバイスを選択します。私たちは、プリンタ、溶液、紙というシンプルな組み合わせで、設計と制御を実現し、紙の自動折り畳みを促しました。このシステムは、プリンタを使って材料を機能化するというコンセプトを証明するものであり、エレクトロニクスフリーのロボットを開発するための有望な方法論となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
印刷によって紙に運動性を与えることに成功したため、進捗についておおむね順調に進展していると判断できる。インクジェットプリンタから印刷する溶液を変化することで、自律構造形成のダイナミクスを変化させることを試みた。自律構造形成の駆動力とダイナミクスは、溶液と紙の間の物理化学反応に含まれており、その物理化学反応の挙動によって制御できる。我々は自律構造形成する溶液に電解質を溶解しその濃度を変化することによって、自律構造形成のダイナミクスにどのような影響を与えるか調査した。その結果、乾燥・潮解の度合いは溶液内部の溶媒と溶質の存在割合によって変化し、乾燥・潮解の分岐によって折り曲がり速度が変化することが判明した。印刷順番に順序をつけることによって、これまでは作製できなかった袋折りなどを達成できるようにより、紙の自律構造形成によって構築できる構造体の幅を広げることができた。 また、構造形成メカニズムの理解を目的として、紙の折れ曲がりと溶液浸透分布の関係を調査した。液体浸透モデルを作成しインク吐出量との関連性を見出すことで構造形成性能の向上と誤差減少を目的とする。有限要素法ソフトにて紙への厚み方向の浸透分布予測モデルを構築することに成功し、それと従来、多孔質の浸透解析式として提案されているLucas-Washburnの式をフィッティングした。今後は実際の浸透分布と有限要素法改・解析解を比較することで、印刷量と折れ曲がりの角度間の一貫したモデル式を構築する。
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今後の研究の推進方策 |
可逆的駆動は印刷によって紙面内部に浸透した湿度応答性材料によって達成される。湿度応答性材料がどのように紙面内に分布しているかの確認を、フリーズドライ、電子顕微鏡、SEM-EDXを用いて行ったが、断面切り出し時の繊維切断状況の影響によって未だその分布については確認できていない。適当な断面切り出し方を調査できたため今後はさらに検討を進めていく。観察結果から浸透分布を推定できたら、印刷量と浸透分布についての予測式を立て、さらにそれと紙の折り曲がりとの関連を解析する。印刷量と紙の折り曲がりについて算出したモデル式に湿度の変数を追加することによって、開発する可逆アクチュエータに適した改良モデル式を導き出し、アクチュエータの駆動を予測・制御することを目標とする。
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