研究課題/領域番号 |
19K20380
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
熊谷 伊織 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60803880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒューマノイドロボット / 運動計画 / 作業計画 |
研究実績の概要 |
本年度はヒューマノイドロボットの作業実行管理システムの基盤となる環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法の開発を行った. まずこれまでに開発した全身干渉回避移動計画手法を拡張し, 移動中にオンラインで障害物を検出し環境変化による移動計画の破綻をリカバリ可能な即応的全身干渉回避移動計画手法を開発した. 既存手法では環境計測情報を環境記憶として蓄積し移動のための足配置計画を行うとともに, 計画した足配置上で環境との干渉を回避するための 全身姿勢計画を逐次的に行うことで少ない計算コストで全身干渉回避移動計画を実現したが, 移動中に常時環境計測を行い環境記憶を更新するとともに全身動作計画を足配置上で逐次的に行うことで新たな障害物による既存の移動計画の破綻を検知し必要に応じて足配置計画をやり直すことで全身環境回避計画におけるエラーリカバリを実現した. また, ヒューマノイドロボットが状態遷移と運動学・力学的制約を考慮した運動を計画するための全身動作計画手法を開発した. 開発した全身動作計画手法ではヒューマノイドロボットの多点接触移動動作を対象に, 手足の接触点の組み合わせを状態として運動学・力学的制約を満たす接触遷移動作により接続可能な状態の経路を探索することで多点接触動作を実現した. 接触遷移動作計画時に遷移する接触点の順序を考慮するとともに接触点を局所的に変更することで, 既存の多点接触動作計画手法では見逃されていた運動学・力学的制約を満たす接触動作を計画可能になった. これらの環境・運動学・力学的制約をふまえた動作計画手法は今後開発を進める作業計画において実行可能な作業の範囲を拡大するとともに, 目標とする作業を実現可能かどうかをロボットが自律的に判断する上で必要不可欠であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はヒューマノイドロボットの作業実行管理システム開発において必要な動作計画手法の開発を行い, 環境記憶に基づく逐次的な全身動作計画を利用した環境との干渉回避制約を考慮したエラーリカバリ可能な全身移動計画手法や接触点探索による多点接触移動計画法をはじめとした運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法を実現した. 一方で今年度計画していた意味論的地図生成手法の開発については深層学習による物体検出手法の検証を行ったものの環境記憶手法との統合までは至っておらず, 次年度以降も継続的な開発を行う. また今年度は移動中に継続して蓄積した環境記憶に基づき, 障害物の移動など環境が変化した場合に経路を再計画するといったような限定的な動作について自律的なエラーリカバリ機能を実現した. 今後は目標とする作業実行管理システムを実現するためにより広範なタスクにおいて適用可能な形に一般化し, 移動行動のみならずマニピュレーション等の作業を統一的に扱うことが可能な状態遷移記述手法に発展させる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は作業の依存関係を考慮したタスク管理システムの開発に重点を置く. 今年度開発した環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法を拡張し, 移動行動以外の作業も含めて統一的にタスクを管理するための作業計画システムの開発を行う. 作業の依存関係を考慮することで必要なエラーリカバリを自律的に行うことが可能な状態遷移に基づくタスク管理手法を開発するとともに, 今年度計画していた意味論的地図生成手法の開発を引き続き行い, 作業に必要な物品を大域的に探索するといったエラーリカバリ動作を自律的に実現することを目指す. 作業計画システムの開発においてはまずエラーリカバリ動作を実現し, その後作業依存関係に基づく並列作業可能性の判断へと発展させる予定である. 開発した作業計画システムはヒューマノイドロボットによる高所トルク締め作業等の移動・マニピュレーションを含むタスクに適用し, その有用性を評価検証するとともに必要な改善点を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法の開発を優先し, 深層学習による物体検出手法と環境記憶手法を統合した意味論的地図生成手法の開発までに至らなかったことから, 研究経費に計上していた深層学習用計算機の購入を行わなかったことで次年度使用額が生じた. 意味論的地図生成手法の開発については次年度以降も開発を継続する予定であることから, 次年度使用額については主に計算機の購入をはじめとした開発環境の整備のために使用する予定である. また現在今年度に開発した動作計画手法に関する論文を投稿中であり, 採択された場合はその論文掲載費用としても一部使用する予定である.
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