研究実績の概要 |
本年度は昨年度開発を行ったヒューマノイドロボットの全身動作計画手法を拡張し, ロボットが運動学・動力学制約を考慮した動作を計画するための運動計画手法の開発を行った. 環境を押す方向の接触力のみでなく引く方向の接触力を考慮するための接触近似手法を提案し, ロボットの安定化可能領域を拡張することが可能となった. また, ロボットの全身動作計画においてある時点における瞬時の姿勢のみでなく, 遷移動作の時系列姿勢群をまとめて最適化する全身運動計画手法を新たに開発した. ロボットの多点接触移動動作を題材とし接触点遷移のための動作を時系列姿勢群の最適化問題として定式化することで, 動作計画結果の全身関節角度及び重心遷移を平滑化することが可能となった. 開発した運動計画手法はヒューマノイドロボットHRP-5Pに適用され, 手すりを用いた急階段の登坂といったより複雑な全身動作計画が実現可能となったことが実証された. 本成果は国際論文誌への投稿を行い, 現在査読中である. 今年度開発した運動計画手法により, ロボットが双方向接触力を要求されるような複雑な作業においても作業計画が可能となるとともに, 瞬時的な姿勢のみでなく時系列の姿勢列をまとめて考慮することで目標とする作業の実行可能性を高めることが可能となった. この環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法は次年度以降開発を行うロボットの作業計画システムの基盤となるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はヒューマノイドロボットの全身動作計画手法を拡張し, 双方向接触力を考慮可能な安定化可能領域の計算手法と遷移動作の時系列姿勢群をまとめて最適化する運動計画手法を開発することで作業実行管理システムの基盤となる環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法の開発を概ね完了することが出来たと考えている. 一方でこれまで動作計画手法の適用先はヒューマノイドロボットの移動動作が主となっており, 作業手順計画へと発展させるためには移動以外の作業への応用を進める必要があると考えている. 来年度以降, 目標とする作業実行管理システムを実現するために昨年度開発した環境記憶や経路再計画といった機能を統合し, 物体操作といったより広範な作業に適用可能なシステムとして発展させていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度までに開発した環境・運動学・力学的制約を考慮した動作計画手法を基盤とし, 作業手順計画の開発を進める予定である. 作業の依存関係の獲得においてはまずオペレータによる遠隔指示を用いることを考えている. オペレータの遠隔指示に基づいて作業手順を記憶し, データベース化を行うことで作業手順の依存関係をグラフ構造として獲得する. その後自律的に作業を行う際に, 周囲環境と獲得した作業手順の依存関係に基づいて適切な作業手順を生成することが可能な作業計画システムを開発することを目指す. 作業手順計画システムはロボットの物体操作作業に適用し, 有用性を評価検証するとともに必要な改善点を検討する.
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