研究課題/領域番号 |
19K20393
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大森 亮介 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任准教授 (10746952)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感染症疫学 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
HIVの有病率を他の性感染症の有病率から推定する手法の精度を検証するために、これまでに開発した、時々刻々と性的パートナーが形成および解消される過程を記述することにより個人レベルの詳細な性的接触ネットワークを記述した数理モデルにHIV、クラミジア、淋病、梅毒、性器ヘルペスの伝播および自然史を記述した数理モデルを組み込んだ数理モデルを開発した。本モデルは同性の性的パートナーのみで構成された性的接触ネットワーク上での性感染症の流行を記述している。また、この数理モデルの開発のためにそれぞれの性感染症の伝播率および自然史に関するパラメータを決めるため、それぞれの性感染症の数理モデルの論文探索を行った。開発された数理モデルを数値解析し、それぞれの性感染症の有病率同士の関連性の第一次近似を得る事で、以下の知見を得るに至った。性感染症の有病率の関連性をスピアマンの順位相関係数により求めたところ、HIVの有病率に最も相関が高い性感染症は淋病であり、クラミジア、梅毒、性器ヘルペスの順に続いた。また、HIVの有病率と各性感染症の有病率の回帰を行ったところ、決定係数は梅毒、淋病、クラミジア、性器ヘルペスの順に高かった。また、全ての性感染症の有病率を同時に考慮しHIVの有病率を推定する回帰式の決定係数はどの組み合わせの性感染症を用いた推定の回帰式の決定係数よりも高かった。性感染症の有病率を組み合わせて使用する事はHIVの有病率の推定に非常に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
淋病、梅毒、性器ヘルペスの伝搬の数理モデルの開発完了は予定通りの進捗であるが、淋病、梅毒、クラミジアの有病率の性的接触ネットワークとの関係性はまだ解析が進んでいない点では予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本成果は性感染症の有病率の関連性のみを解析している。これまでにHIV及び性器ヘルペスの有病率の性的接触ネットワークとの関係性を解析したが、淋病、梅毒、クラミジアの有病率の性的接触ネットワークとの関係性はまだ解析が進んでいないため、これを解析する。また、本モデルは同性の性的パートナーのみで構成された性的接触ネットワーク上での性感染症の流行を記述しており、これを異性間のネットワークを記述するモデルに拡張する。さらに、性感染症の流行下で観察される可能性が議論されている流行干渉について、流行干渉の流行過程に対する影響の数理解析を進め、これまでに基本再生産数ではアウトブレイクが起きる可能性を検証できない可能性が指摘された流行状況も解析できるような、基本再生産数に代わる統計量の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算量が大きいシミュレーションが次年度に持ち越しとなったため、ワークステーション及びそのワークステーションに導入する為のソフトウェアの購入を、次年度に持ち越した。また、本年度は解析に集中したため共同研究及び成果報告の為の旅費は次年度に持ち越した。
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