研究課題/領域番号 |
19K20393
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大森 亮介 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (10746952)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感染症疫学 / 数理モデル / 感染症 |
研究実績の概要 |
感染症流行のデータ解析は一般的には感染者数の時系列データを解析する。各時点での感染者数を推定するために様々なデータが用いられてきた。現在世界的に大きな流行が観察されている新型コロナウイルスの様な新興感染症における各時点での感染者数を推定できるデータは、症状を認めたケースの検査もしくは感染の診断が下りた人の濃厚接触者の検査による感染者の確定になることが多い。そのようなデータを用いた場合、新興感染症の特に流行の初期においては、定量はもとより定性的にも感染症の流行を捉えられないことが判明した。これは主に総人口における検査の割合と検査の対象の基準が時間とともに変化していることに起因していると考えられる。 また、新興感染症の流行制御のためには、感染症の特徴を理解することが重要である。新型コロナウイルス感染症において,重症者及び死亡者は高齢者に偏る傾向がある。重症者及び死亡者が高齢者に偏るという現象には,2つの説明が考えられる。1つは高齢者が感染しやすいために重症及び死亡が高齢者に偏るという説明で、もう1つは,感染しやすさは年齢によらないが,感染成立後の重症化のしやすさが高齢者ほど高く,重症化及び死亡が起こりやすいという説明である。これらの説明のうちどちらがもっともらしいかについて、2020年5月時点で流行規模が大きく異なったイタリア、スペイン、日本の三カ国で検証した。数理モデルを用いた解析では、死亡率や症状が出る率といった病状の進行の進みやすさが年齢によって異なる事が、新型コロナウイルス感染症の重症及び死亡は高齢者に偏る傾向の原因であると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行により、国際共同研究者との共同研究が困難になってしまった為、性感染症の研究は滞っている。一方で、新興感染症の流行により、新たなデータが得られることで感染症の流行解析の新たな知見を得るに至った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの流行が収束し国際共同研究が再開可能になった場合、淋病、梅毒、クラミジアの有病率の性的接触ネットワークとの関係性の解析、および、性感染症数理モデルを異性間ネットワークモデルに拡張する。もし国際共同研究が再開出来ない場合は、新型コロナウイルスの流行解析から、さらなる感染症疫学におけるデータ解析の発展を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、国際共同研究および国際学会での発表、論文投稿費の支出が困難となったため。次年度使用額は、次年度での国際共同研究および国際学会での発表および論文投稿費にあてる。
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