研究課題/領域番号 |
19K20396
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
服部 佑哉 東京工業大学, 工学院, 助教 (30709803)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線ストレス応答 / 培養細胞 / 低線量放射線 / ニューラルネットワーク / シミュレーション |
研究実績の概要 |
低線量の放射線が照射された培養細胞集団では、高線量放射線照射時とは異なるストレス応答が報告されている。本研究の目的は、組織、器官、個体の基本構造である「3次元細胞群」において、ミクロな階層である「細胞レベル」で、「低線量放射線ストレス応答の時空間動態」を推定・制御することである。 本年度では、低線量放射線ストレス応答の再現に必要なDNA修復機構のモデル化と、従来モデルへの機械学習の実装を実施した。 DNA修復機構のモデル化では、細胞内のDNA損傷の程度をレベルに分けて、損傷と修復のイベントによって損傷レベルが変化するとした。損傷のイベントでは、マイクロドジメトリの観点から、放射線の線量率と時間を変数として、損傷が蓄積する速度を計算した。修復のイベントでは、修復メカニズムと実験データを基に、時間を変数として、損傷が減少する速度を計算した。構築したモデルを、細胞の生存率モデルに組み込み、放射線の照射線量、線量率、照射時間、照射の分割数を変えて細胞の生存率を計算した結果、実験と似た生存率の変化の傾向が得られることを確認した。 従来モデルへの機械学習の実装では、これまでに構築した細胞間コミュニケーションと低線量放射線ストレス応答の関係性を表現した培養細胞集団の数理モデルについて、放射線ストレス応答の一つである細胞死を指標に、モデル内の各種パラメータを決定する確率的勾配法を用いた。本手法を用いて実際にパラメータを学習した結果、教師信号を十分に再現するパラメータを得られた。しかしながら、一部の試行では、パラメータが局所解に留まり、誤差の減少が停滞したため、改善の余地がある。 以上により、構築したモデルと実装した機械学習は、本研究計画を進める上で有用であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、3次元細胞群において、入力が各細胞への放射線照射パターン、出力が各細胞のDNA損傷度、変異・生存状態であるニューラルネットワークを開発することであった。 計画通りにNNの開発を進めていたが、低線量放射線ストレス応答を再現するために、DNA修復機構のモデル化が必要となったため、モデル化を実施した。その後、培養細胞集団モデルへの機械学習の実装を実施した。DNA修復機構のモデル化は、本年度の計画になかったものの、計画通りニューラルネットワークの学習機能を持つ培養細胞集団モデルが構築できた。一方で、DNA損傷度や変異状態を教師とした学習は、着手しているものの、実装できていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、計画通り、入力が低線量放射線ストレス応答(各細胞のDNA損傷度、変異・生存状態)、出力が各細胞への放射線照射パターンであるニューラルネットワークを開発する。また、本計画に着手する前に、課題として残った機械学習の機能向上とDNA損傷度や変異状態を教師とした学習の実装を実施する。そして、初年度で構築したニューラルネットワークと、次年度で構築したニューラルネットワークの入出力を比較し、パラメータや学習の実装方法などの調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度で計画していた放射線ストレス応答の細胞集団モデルへの機械学習の実装は、マシンパワーを必要としていたため、80万円分のワークステーションを購入する予定であった。しかしながら、機械学習を実装する前に、低線量放射線ストレス応答の再現に必要なDNA修復機構のモデル化を進めたため、当初の予定より初年度の計算量が減った。一方で、初年度に実施できなかった残りの機械学習を次年度に実施する予定である。したがって、初年度の研究経費の一部を次年度に使用する。
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