研究課題/領域番号 |
19K20398
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鎌田 真由美 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70749077)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質立体構造ダイナミクス / 特徴抽出 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
ゲノムシークエンス技術の発展により、数多くのゲノムの違い(バリアント)が報告されるようになったが、未だその多くが機序不明である。タンパク質立体構造の動態的変化が、薬剤感受性などに影響を与えると考えられている。つまり、バリアントと疾患の関連や薬剤感受性への影響を解明するには、静的なタンパク質構造の変化だけでなく、バリアントによる動態変化を捉えることが重要である。本研究の目的は、バリアントに対する分子動力学シミュレーションで得られる時系列データから、タンパク質立体構造ダイナミクスの動態的な変化を表す特徴抽出およびその可視化手法の開発である。2019年度は、薬剤耐性既知のキナーゼを対象に、特徴抽出手法の有用性について検証行なった。薬剤耐性について生化学的実験においても多くの研究報告があるEGFR(epidermal growth factor receptor)を対象とし、第1世代EGFR阻害剤であるGefitinibに対する薬剤感受性が実験的に検証されており、かつ、キナーゼドメインの立体構造決定されている2変異体(薬剤奏功変異L858R, 耐性変異G719S)と野生型に対して分子動力学シミュレーションを実施した。シミュレーションで得られた2変異体と野生型の時系列データに対し、Morlet waveletを用いた連続ウェーブレット変換を適用し、さらに行列分解法により次元圧縮を行い、各原子の振動を低次元で表現する特徴ベクトルを作成した。これらを用いて、薬剤耐性に構造的に関与するアミノ酸の検出が可能かを検証したところ、耐性変異において対象アミノ酸が特徴的に異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で用いる特徴抽出手法では、各原子に対する特徴ベクトルを得ることができる。しかし、アミノ酸置換を起こすバリアントを有する場合、変異体間および野生型とでは、分子を構成する原子数が異なる。2019年度はt-SNEを用いて同一次元への埋め込みを行い、分子間での違いについて検証し、関連するアミノ酸を確認することが可能であることが示唆された。他手法との比較や、異なる次元圧縮手法による検証も検討するが、2019年度実施予定であった解析については上記の結果を得られていることから、概ね順調に進展しており、本年度実施予定である解析プロトコルの構築および可視化手法の開発において影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、特徴抽出のための解析プロトコルの構築と特徴量の可視化方法について検討を行う。まず、本研究の優位性を検証する目的で、静的構造に対する他の特徴抽出手法を用いて耐性の異なる変異体間での差異の検証を行う。次に、本研究での手法は、分子動力学計算から連続ウェーブレット変換など、解析を実施する上で多数のパラメータを検討する必要がある。そこで、今回用いた系を例に、シミュレーションから特徴抽出までのパラメータ設定を再度検証し、有効な解析プロトコルについて提案する。そして、本研究で得られる特徴量を適切に評価するための可視化手法を開発する。これまでに提唱されているData Visualizationセオリーに基づき検証する。具体的には、SVDやNMF等で得られる特徴量をヒートマップや折れ線グラフ形式で描画し検討する。更に、タンパク質の3次構造および2次構造へのマッピングおよびノードとエッジからなるグラフ表現を用いて、バリアントによる動態変化と機能との関連解析を行うために効果的な表現方法の検討を行う。
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