研究課題/領域番号 |
19K20399
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 智弥 京都大学, 化学研究所, 助教 (50795333)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞系譜比較 / 細胞系譜推定 / 単一細胞解析 / 木のアラインメント / 木の編集距離 / オミックスデータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,単一細胞オミックスデータに基づいて細胞系譜推定から比較までを高精度に行う統合解析アルゴリズムを開発することである.その目的達成のために下記3項目の研究を実施する.(1)情報の損失をできるだけ抑えた細胞系譜推定手法の開発,(2)グラフ理論に基づく新たな細胞系譜比較手法の開発,(3)オミックスデータ統合解析手法の開発.これらを通して高精度かつ高速な細胞系譜統合解析を実現し,生物種間,細胞種間,そして正常細胞と疾患細胞間の系譜の差異を明らかにする. 昨年度は(1)および(2)に関して,個々の細胞間のノイズを取り除くために類似細胞のクラスタリングを適用した木構造を構築し,さらにそのようにして構築された木構造間のアラインメントを計算して細胞群(クラスター)の対応関係を求める手法を開発した.この手法をヒト繊維芽細胞およびヒト骨格筋芽細胞のデータに適用し,2つのデータセット間の細胞群の対応関係を求め,さらにアラインメント上のパスから動的時間伸縮法に基づいて擬似時間の比較を行い,既存の報告と同様の結果が得られることを確認した.ここまでの成果はプレプリントリポジトリである「bioRxiv」にて公開し,学会および研究会にて発表した.本年度は,上記のデータ以外にも人工データや骨髄の細胞データへと提案手法の適用範囲を拡大し,その有効性を確認する実験を追加で行った.また,本提案手法はヒト・マウス間のように異なる種間でのアライメントも可能であり,今後これらの技術の発展によってヒト疾患の制御に関する新たな知見が得られる可能性もある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べた通り,(1)情報の損失をできるだけ抑えた細胞系譜推定手法の開発と(2)グラフ理論に基づく新たな細胞系譜比較手法の開発は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
(2)に関しては木のアラインメントを計算する仕様にしているが,木の比較のより一般的な計量である木の編集距離に基づく手法についても実装を進める予定である.また,本年度と同様,複数のデータセットにも適用しながら他の計算機手法とも比較して提案手法の有効性を検証する.そして(3)に関して,トランスクリプトームデータとメチロームデータの統合解析手法についても検討を進める.
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