本研究の目的は,二次元界面膜を駆使して生体機能を無生物モデル化することである.具体的には,力の感知と細胞内シグナルへの変換機構における,力学的刺激による機械受容チャネル駆動と付随して起こる分子変換反応の人工的構築である.本研究では,界面の異方性を利用して,まず二次元脂質二重膜を構築し,これに人工機械受容チャネル(DNAナノチャネル)を挿入することによって,一軸方向からのマクロスコピックな力学的刺激の印加によるナノスコピックな機械受容分子輸送チャネル機能の発現を行う.さらに,このチャネルを介して輸送される基質分子の水相中常温触媒反応をチャネルの開閉と連動させることで,1つの系にチャネル駆動(分子の輸送)と化学反応を統合させた動的な階層的機能を構築する.本研究の達成によって,生体に対する力学的刺激の応答機構を探求しその応用を目指すメカノバイオロジーに対し,誰にでも扱えるシンプルな無生物モデル構築技術を提供できる. 研究期間中には,DNAオリガミで作製したナノチャネルの作製とその両親媒化に成功した.作製したDNAナノチャネルは,四隅が柔らかく変形するように設計したため,内角は様々な値をとると予想した.DNAナノチャネルに対して,負染色TEM観察を行い内角の定量評価を行ったところ,その値は59.1°±20.6°であった.DNAナノチャネルの内角は常温においてほぼ90°になるよう設計され,また四隅が柔らかく変形し得ることを考慮すると,90°寄りに偏り,かつ幅広い分布を示した結果は妥当である.この幅広い分布は,外的要因によってDNAナノチャネルが大きく変形可能であることを示唆している.
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