研究課題/領域番号 |
19K20408
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
横田 亮 科学警察研究所, 法科学第二部, 主任研究官 (80733154)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 異同識別 / 微生物叢 / シークエンス解析 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画では、微生物叢の16S rRNA配列の情報を利用した採取試料の異同識別を目的としていたが、既存研究の公開データや共同研究者より提供を受けた実験データを解析したところ、温度や湿度等の環境要因や経時的変化等の影響による菌叢構成の不確実性が顕著に観察され、個人の異同識別を実用化レベルの推定精度で実現することが現状では難しいと判断された。そこで、計画外の研究として、所属研究所の共同研究者と共にウイルス叢情報の活用を検討し、CRISPR領域のスペーサー配列情報から個人の異同識別を行う手法の研究に取り組み、その研究成果を国際論文誌mSystemsに昨年度発表した。本年度は、同研究成果において、DNA抽出プロトコルが微生物叢の構成分析結果に影響を与える可能性が示唆されたことから、DNA抽出プロトコルの最適化について共同研究者と共に検討を行った。具体的には、 2つのDNA抽出プロトコル(EZ 1 DNA Investigator KitとDNeasy PowerSoil Kit)の比較を行い、16S rRNA遺伝子コピー数とCRISPRの多様性に対して2つの抽出法に有意な差がないこと、また、線型サポートベクターマシンを用いた個人の予測モデルの精度においても差がないことを確認した。同成果は、国際論文誌Forensic Science International: Reportsにおいて発表された。 また、観測配列の配列情報と観測回数を同時に考慮した採取試料の異同識別手法(重み付きUniFrac解析をWasserstein距離と解釈する手法)と、観測配列の観測回数のみに着目するノンパラメトリックベイズを応用した手法を比較し、各手法の有効性の程度について昨年度に引き続いて検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、科研費関連以外の業務増加や研究活動の著しい抑制が生じた。また、所属研究機関におけるセキュリティー保持の観点から、オンライン上で の計算資源の運用及びデータの管理ができないため、データの解析において著しい遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、TCRレパトア解析手法の応用として細菌叢16SrRNA配列間の差異を定量化した上で低次元空間に埋め込み、同空間で形成されたデータ点のクラスタを軸としてサンプル間比較を行う予定であったが、形成されたクラスタの定性的な解釈や精度に課題があったことから、観測配列と観測回数を同時に考慮したサンプル間比較の統計的解析手法について昨年度より検討を行っている。今後の研究計画として、重み付きUniFrac解析がWasserstein距離と解釈される点を元に、Wasserstein距離を利用したサンプル間比較の手法が従来のSourceTrackerを始めとした観測回数のみに着目するノンパラメトリックベイズを応用した手法と比較してどの程度有効であるかについて昨年度に引き続いて検討を行い、同研究成果の国際論文誌への発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、計画していた学会参加を目的とした国内外の出張を行わなかったため。また、同感染症の蔓延と研究の進捗に伴う研究計画の変更による研究計画に遅延が生じ、予定していた学術雑誌への研究成果の投稿が遅れているため。
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