研究実績の概要 |
植物タンパク質を利用した,ヒト培養細胞内の様々なオルガネラに輸送可能な評価モデルの構築 バイオインフォマティクス技術を用いて、O型糖鎖修飾を受けている糖タンパク質について,細胞内局在・糖鎖修飾情報をもとに,細胞内での局在化経路および糖種に応じて分類した.糖タンパク質をシグナルペプチドや膜貫通領域の有無で,細胞内在型・分泌型・シグナルアンカー型・膜貫通型の4グループに分類し,O型糖鎖修飾の糖種を調査した.シグナルペプチドもしくは膜貫通領域を有する分泌型・シグナルアンカー型,あるいはその両方を有する膜貫通型の糖タンパク質は,トランスロコンから小胞体に挿入され,小胞体を経由する局在化経路(小胞体・ゴルジ体・細胞膜・細胞外分泌)を通る.小胞体経由の3グループにおいては,主としてFuc・Xyl・GalNAcの修飾が見られた.一方,小胞体を経由しない局在化経路(核・細胞質・ミトコンドリア)を通る細胞内在型タンパク質においては,O型糖鎖修飾の100%がGlcNAcによることがわかった.上記の結果は,O-Fuc・O-Xyl・O-GalNAc・O-GlcNAc転移酵素の細胞内局在性とよく一致した. 上記の研究内容に加えて、モデルタンパク質を作成し,実験的に検証を行った.植物由来のGPIアンカー型タンパク質CEBiPをもとに,局在性に関与するシグナル領域前後にAcGFPを導入し,最適な条件を検討した.GPI修飾に寄与するAS領域の前にGFPを導入することで,適切にオルガネラを経由し細胞膜に局在化することが本研究で示された.一方で,DsRed-Mitoを同時にHeLa細胞に導入することで,キメラCEBiPがミトコンドリアに誘導されていることから局在性をプラスミドに変異を導入せずにタンパク質局在性を変化させられることが新たに明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において,タンパク質の細胞内局在性と糖種との相関を,バイオインフォマティクス解析によって明らかにした.また,これらの実験的検証に向けて,モデルタンパク質をコードする複数の遺伝子をクローニングし,モデルタンパク質の細胞内局在性を人工的に制御することに成功した.また糖種や細胞内局在性の組織特異性を確認するためのモデル生物として線虫を選択し,網羅的なバイオインフォマティクス解析により線虫タンパク質の糖種特異性を明らかにしました.その結果、多様なモデル生物を対象にこれまでのバイオインフォマティクス研究を応用し、糖種選択性を明らかにするとともに、実験的にモデル生物を用いることで、さらに明らかにできることが期待される。そのため、今後は多くのモデル生物での解析を行い、生物種をまたがった解析を行い、その情報を応用した実験結果を基にデータベースへの還元を行うとともに,実験による新たな発見を目指す.
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