研究実績の概要 |
糖鎖は核酸やタンパク質に次ぐ第三の生命鎖として知られ、糖鎖を形成する糖の 種類(糖種)には多くのバリエーションがあり、それぞれが特異的な生化学反応と 密接に関連している。とりわけ、O型糖鎖修飾は細胞膜表面に存在するタンパク質に 多く見られることから、ゴルジ体で修飾されると考えられてきた。ところが、糖鎖 の研究が進むにつれ、N-アセチルグルコサミン (GlcNAc) 修飾が核や細胞質、ミトコ ンドリアに存在する糖タンパク質に多く含まれることが報告されるようになった (Kreppel, L.K, et al.: J. Biol. Chem., 1997; Cao, W. et al.: PLoS ONE, 2013) 。したがって、 細胞内の糖鎖修飾システムの理解には、タンパク質が翻訳後に糖鎖修飾を受ける一 面に着目し、細胞内局在や局在化経路に応じて糖タンパク質を分類し、修飾された 糖種を明らかにすることが必要不可欠である。そのため、細胞内局在に寄与するシグナル配列をベースとし、細胞内での糖種分布を調査し、明らかにしてきた。さらに、実験的に確認するべく、人工的にタンパク質の局在をコントロールするためのモデルタンパク質を作製し、その局在を確かめるアプローチを確立してきた。 当該年度では、研究計画通りに進んでおり、昨年度に実験的アプローチが成功していることから、サンプルとして作製したモデルタンパク質の局在経路を新たに追加するために、モデルタンパク質が受けるGPI修飾に着目し、解析を行なってきた。とりわけ、GPI修飾は糖脂質をタンパク質へ修飾する反応であり、修飾されたタンパク質を細胞膜へ局在化させるため、その解明と糖鎖修飾との相関関係を明らかにしてきた。
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