研究課題/領域番号 |
19K20417
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
伏見 卓恭 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (80755702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 移動行動モデル / 協調と競合 / 空間ネットワーク / 施設配置問題 |
研究実績の概要 |
2020年度の核となる課題は,道路網や路線網などの空間ネットワークの構造から観光圏を自動的に抽出することと,部分ネットワークの構造特性を定量化し,類似する地域を抽出することである.この研究課題に取り組むにあたり,近年注目を浴びている不確実性グラフとハイパーグラフに着目し,これらの構造を分析する手法の提案に着手した.特に,自然言語処理の分野で古くから使用されているTFIDFという文書と単語の関係の強さを表す指標を用いて,ハイパーグラフを高速かつ高精度にクラスタリングする手法を提案した.これにより,対象地域の空間ネットワークを高速にクラスタリングするタスクに対する示唆が得られた. これらの基礎研究に加えて,地域に存在する観光資源の配置場所に関する研究にも着手した.インバウンドの外国人観光客だけでなく,日本人観光客にとっても飲食店やコンビニなどは重要な観光資源であり,これらの立地が観光産業の今後の発展に寄与すると考えられる.そこで,コンビニチェーンの協調と競合関係を考慮した新規店舗出店場所,および,既存店舗廃止場所の指標を提案し,各地域における立地場所の予測問題への適用を調査した.実際の道路網と地域の人口密度,コンビニの立地場所,開店閉店に関する情報を用いて,提案手法による予測精度を評価した結果,従来のモデル(グラビティモデル)に比べて高い精度で予測できることを確認した. さらに,観光産業を支えるテーマパークにおけるユーザの行動を規定する確率的効用関数を設定し,モデルに基づくマルチエージェントシミュレーションの枠組みで各アトラクションの待ち時間予測問題への適用を調査した.東京ディズニーリゾートにおける実際のアトラクション待ち時間のデータを使用した評価実験により,従来の手法より精緻に待ち時間を予測できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究成果として,ハイパーグラフの高速クラスタリングに関して,複数の国内外の学会にて発表することができた. 同様に,地域における施設の配置場所予測に関して複数の国際会議で発表でき,さらに,ジャーナル論文へ採録されたため,順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究計画として,「特性を考慮したスポットの組合せとしての最適観光ルート推薦」に着手する予定である.まず,SNSに投稿された位置情報付きの写真群から,被写体のカテゴリを深層学習の手法により推定し,各地域においてどのような特性の写真が多く投稿されるか,そして,どのような組み合わせの写真が多いかにより地域特性を定量化する.加えて,ハイパーグラフにおけるハイパーノードとハイパーエッジを低次元空間に埋め込む手法を提案し,その手法に基づき,観光スポット(ハイパーノード)の集合あるいは順序付き集合(ハイパーエッジ)に対して,分散表現などと同様なベクトル演算を用いることで,スポット集合の効用を定量化する.この効用値の高低が,スポットとして推薦するか否かの指標となる.この提案手法を用いて観光ルートを推薦する方法論を確立していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
発表した国内学会および国際会議が,新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けオンライン開催となり,旅費の使用がなくなったため. 未使用額(612,656円)と2021年度予算額(900,000円)は,2021年度開催予定となっている国際会議3件の旅費・参加費に900,000円,現在投稿済み・査読中のジャーナル論文の掲載料に300,000円,データ整備のためのアルバイトへの謝金に100,000円,残りは消耗品の購入費として使用する予定である.
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