PBLなど主体性の高い学習活動における議論は,全体成果に影響を与える重要な存在である.その能力を育成するためには,未熟者に議論経験を積ませるべきであるが,参考になる事例の準備困難性などの問題から,十分に行えない実情がある.本研究では,初学者に対して「議論を遂行するための経験(引き出し)」を自ら醸成するきっかけとなる事例を与える能力育成手法を開発する.具体的には,情報発信メディアとして活発に利用されているソーシャルメディアをソースとして,支援対象議論と話題が類似する議論の抽出手法,議論活性度の推定手法,および,性質別の発言や議論構造を抽出する手法を開発する.これらの手法を導入し,ソーシャルメディアから,有用な議論事例(発言・議論展開)を抽出・示唆するシステムを開発する.これにより,身近な潜在ソースを活かした議論遂行能力育成の新たな可能性を探る.
2021年度は,主に,議論事例・手がかり示唆システムの開発に取り組んだ.まず,各抽出モジュールの実装過程における介在データの特徴に関する知見を踏まえて,支援システムに具備すべき機能の検討,示唆情報などUI系の設計を行った.次に,開発したモジュールをサブシステムとする形で,潜在データの収集・分析から,議論事例と手がかりの抽出・示唆までを担う支援システムのプロトタイプを開発した.その上で,開発した支援システムを大学研究室における実際の議論に適用し,実践試用した.その結果に基づいて,提案手法の有効性評価・知見整理を実施した.
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