研究課題/領域番号 |
19K20431
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
櫻井 快勢 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員 (30729562)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | デジタルファブリケーション / 3Dプリント / 印刷 / コンピューターグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、表面の反射特性を制御できる構造を明らかにすることである。本年度は、設定した複数の視点方向に、任意の画像を出力するような平面状の反射板の制作手法を模索した。インクの種類によって透過性が異なるため、それらに適切な構造を考案した。また、それらについて、特許を出願した。 具体的には、まず、印刷物の見え方のシミュレーションから考えた。シミュレーションのために、インクの吸収率の計測から開始した。この計測により、使用するプリンターによって、インクのドットの大きさ、厚みとインク自体に違いがあることが明らかになった。続いてその性質を用いて、レンダリングモデルを構築した。その後、反射特性を制御できる構造と色のパターンの考案に着手した。 性質のひとつに、透過性の高いインクがある。透過性の高い異なる色のインクを三次元上に配置することで、視線方向に応じて、インクの重なり方が変わり、視点に届く色が変わることを明らかにした。配置されるインクの粒の集合とそれの各視点での見え方と、所望の画像は非線形問題で表現することができた。この非線形問題を解くことで、適切なインクの配置を求められた。透明シート上にインクジェットプリンターでインクを塗布し、重ねて層状にすることで、三次元的なインクの配置を実現した。 また、拡散性が高いインクにて、特定の三次元形状の表面を着色することで、視線方向に応じて、見え方が変わることも明らかにした。この形状は、単位球と視線方向の交点を母点としてボロノイ図を形成し、単位球で切り抜いた三次元形状とした。着色パターンは、最小二乗法にて、求めることができた。 その他には、既存手法である、微細な凸形状の壁を配置することで方位角依存の異方性反射の実装法を改良し、輝度を向上させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、モアレと微細加工を応用するアプローチを想定し、おおむねその通りである、層状の印刷パターンの生成と微細な三次元構造とその表面上のパターンの生成により、目標であった複数の指定方向へ任意の画像を表示することができた。なお、論文発表について投稿したが採録に至っていないため、当初予定した掲載料およびオープンアクセス費をまだ使用していない。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは平面に対する加工を前提としたが、今後は三次元形状の表面に施す技術を開発する。そのための見え方を指定するためのユーザーインターフェースから開発を始める。次に、指定された見え方を実現するような構造生成ソフトウェアを開発する。この後、三次元形状をそのまま3Dプリンターで出力するアプローチと、二次元の印刷面に展開するアプローチを試みる。以上により、交付申請書の「研究の目的」の中で記述したような、ホログラムと同等の効果を有する三次元の印刷面や構造色を持つタマムシのような昆虫の模型の制作が可能になる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた購入予定の装置であるコニカミノルタ色彩輝度計では、計測範囲が限られており、現在の技術で制作した反射板の計測に不向きであることが明らかになった。そのため範囲の広い計測装置の購入検討のため見積もりをとったが、予算を超えていたため、デジタルカメラと標準光源、標準反射板を購入し、計測装置の代用とした。そのため、購入予定の物品が変わり、使用する金額に差が生じた。また、反射板制作においても、実験用ソフトウェア開発が主になり、実例の制作が予想より少なかった。また、論文を投稿したが採録に至らなかったため、それにかかる費用を要しなかった。そのため、今年度の使用額が小さかった。 次年度では、今年度制作できなかった実例の制作に取り掛かる。そのために、3Dプリンタおよびインクジェットプリンタの購入とプロトタイピングの外注に、残りの予算を使用する。2020年10月まで(前期中)に複数のプリンタの選定および購入を実施する。また、今年度達成できなかった論文の採録を見込めるため、この掲載料に使用する。
|