本年度は、2件の特許出願と1件の学会発表を実施した。特許出願の2件のうち1件は、登録査定となった。また、昨年度に出願した特許も1件登録査定となった。 これまで3Dプリンターで制作できる立体造形物の表面に、視線依存で変化するような色、模様を付与する技術はなかった。これを実現するために、不透明部材による異方性表示の開発に取り組んだ。結果、視線に応じて、異なるカラー画像を表示できるような印刷物及び立体物の制作に成功した。別の言い方をすれば、立体造形物の表面での多視点表示化を実現できた。 これまでの研究では、平面的なディスプレイの多視点化が盛んであり、それらではレンズを用いて光の屈折を起こすことで、異方性を作っていた。または、インクの空間的な分布によって光の吸収率を方向依存にしていた。そのため、不透明部材しか配置できない、3Dプリンターでは、異方性表示が実現できなかった。本研究では、指定形状の表面に適切な凹凸を付与することで、指定の視線へ狙いの異方性を与えられることを明らかにした。具体的には、与えられた複数の視点方向を分断するように壁を形成することで、異方性の効果が表れる。視点を分断する壁は、与えられた視点から生成された母点で構成される三次元ボロノイ図を部分的に切り取ったものを用いる。これらの壁は、指定の視点へは壁の内側の領域を露わにし、外側からの視線を妨げるため、指定の視点へ指定の色を表示しやすくする。壁を含めた表面の色は、指定の模様となるように、逆レンダリングで与える。この処理により、不透明部材での立体造形物で多視点化が可能となった。本手法により、不透明の部材を立体に配置する、市販の3Dプリンターで目標の効果を持つ指定形状の立体造形物を制作できた。
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