研究課題
植物の二酸化炭素吸収量を推定するためには、植物が光合成に使うことができる光の量 (光合成有効放射、PAR) を知ることが必須である。多くの地球規模 (広域) での生態系モデルでは、PARを直接入力値として用いるのではなく、高精度観測が行われている日射量を入力値として用い、一定の日射に対するPARの比 (以下、PAR比と呼ぶ) をかけてPARを算出している。PAR比は、気象要因によって変化することが知られているが、PAR比が、どの気象要因 (太陽天頂角、水蒸気圧、雲量) にどのように依存しているのかについては、地域によって異なるモデルが提唱されており、全球に適用可能な推定モデルはこれまで確立されていなかった。特に、PAR比の太陽天頂角依存性については、多くの報告があったが、光観測において問題となる観測機器の入射角依存性に起因する問題を削減するために、直達光のみを観測するシステムと、散乱光のみを観測するシステムを用いて、日射とPARそれぞれを高精度観測することにより、PAR比の太陽天頂角依存性は極めて小さいことを明らかにした。本研究では、この高精度な観測データを用いて、2つのPAR比推定モデルを作成した。「水蒸気圧」のみでPAR比を推定するモデルと、「水蒸気圧」と局地的かつ時間変化の高い「雲量」を用いることで、より高精度にPAR比を推定するモデルである。国内3か所でこの推定モデルの精度検証を行うとともに、大気放射伝達モデルを用いて、高緯度、中緯度、熱帯域のどの大気においても適用可能であることを確かめた。さらに、この推定モデルにより、全球のPAR比分布と季節変動を明らかにした。PAR比は、約3%の誤差で推定可能となり、一定のPAR比を使用した場合の15%の誤差を大きく削減することを可能とした。本成果は、国際学会誌に発表された (Akitsu et al., 2022)。
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International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation
巻: 108 ページ: 102724~102724
10.1016/j.jag.2022.102724