本課題では、浜名湖における二酸化炭素収支を毎月の観測から推定した。浜名湖表層水における二酸化炭素分圧は29~1476マイクロアトムの範囲で変動していた。また、観測の大部分で大気の二酸化炭素分圧に対して未飽和であるため浜名湖は大気中の二酸化炭素吸収域となっていることが明らかとなった。また、二酸化炭素分圧は、溶存酸素飽和度と逆相関関係であったため時空間変動は植物プランクトンによる生物活動と関係していると考えられた。また、年間を通して二酸化炭素分圧は未飽和・溶存酸素飽和度は過飽和であったため、植物プランクトンの光合成による二酸化炭素消費が有機物分解による二酸化炭素生成の効果を上回っていたためだと考えられる。一方、浜名湖東部では季節を問わず二酸化炭素の放出域となっていることが多かった。これは浜名湖東部では下水処理水の影響を強く受けているためだと考えられた。また、大雨直後の観測では浜名湖全域で二酸化炭素の放出域となっていた。これは、大雨による未処理の排水や陸域からの有機物供給、その分解による二酸化炭素生成の効果であったと考えられる。 浜名湖は東京湾・大阪湾・伊勢湾などの都市沿岸海域同様に二酸化炭素吸収域となっていることが明らかとなった。これは、東京湾同様に下水処理場による易分解性有機物の除去の効果が大きい。しかし、下水処理場で比較的除去を行いやすい炭素に比べ窒素の除去は炭素不足により律速されている可能性が考えられる。その結果、浜名湖の栄養塩長期変動は化学的酸素要求量やリン酸塩は減少傾向であるものの、窒素(硝酸塩)は横ばいもしくは増加傾向であった。
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