研究課題/領域番号 |
19K20437
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大畑 祥 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 助教 (70796250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エアロゾル |
研究実績の概要 |
研究実施計画では、水中に分散する粒子にレーザー光を照射し、その散乱光強度の角度依存性を検出することにより、生物由来粒子と鉱物粒子を分離して数濃度・粒径を測定する測定器を開発する計画としていた。しかし近年、入射するレーザー光と水中の粒子の前方散乱光の干渉を検出するSingle-particle extinction and scattering method (SPES法)が開発され、これにより各粒子の粒径と複素屈折率の情報が同時に得られることが東京大学の研究グループにより示された。SPES法は、当初の計画で研究の目的とした固体エアロゾルの数濃度・粒径・組成情報の光学的な測定を可能にする技術であり、SPES法に基づく測定器は当初開発を計画した測定器よりもシンプルなフローセル構造と高いハードウェア拡張性を持っている。 そこで本研究で用いる装置の測定原理として、粒子の散乱光強度の角度依存性の検出ではなく、SPES法を利用することとした。また、エアロゾルの水中への捕集方法は、まずフィルタ上にエアロゾルを捕集し、その後で水に分散させる方式とした。この手法を確立することにより、様々な環境で採取したエアロゾル試料の分析への応用が可能になる考えられる。 今年度は、上述の検討を行った上で、SPES法を用いた測定器の立ち上げを東京大学の研究グループの支援のもとで行った。また、粒径・複素屈折率・形状が既知の標準粒子を用いて測定器の光学系の校正に取り組んだ。名古屋の都市大気のエアロゾルを試験的に捕集し、水に分散させ、SPES装置で分析することにより初期データを得た。オーストラリアの森林において2020年1月18日から2020年3月13日の期間にエアロゾル試料の採取を行い、清浄な森林大気と森林火災による汚染大気の両方の影響を受けた試料を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年確立されたSPES法に基づく測定器の立ち上げを行ったことにより、当初の計画よりも早く実大気の固体エアロゾルの試験測定を実施できている。一方で、当初の計画とは異なる測定原理の装置を立ち上げていることや、エアロゾルを直接水中に捕集する方式ではなく、様々な環境試料の後分析を可能にするためフィルタ上にエアロゾルを捕集した後で水に分散させて分析する方式を採用するなど、当初の計画から変更を行っている。これらの状況を総合的に考慮し、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
フィルタ捕集とSPES法に基づく定量的な固体エアロゾルの測定を行うため、フィルタのエアロゾル捕集効率・フィルタに捕集されたエアロゾルの水への分散効率・SPES装置の粒子検出効率を室内実験で決定する。また、特定の組成の固体エアロゾルに強い感度を持つ他のエアロゾル測定器との比較を通じて本手法の評価を行う。
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