研究課題/領域番号 |
19K20439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安宅 未央子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (00757924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 幹呼吸 / 土壌呼吸 / 炭素循環 / 地上部 / 地下部 / パルスラベリング / タイムラグ |
研究実績の概要 |
本研究では、樹木の各部位の炭素放出速度をリアルタイムで測定できる手法と樹体内炭素動態を測定できるパルスラベリング法を用いて、樹木の各部位のCO2放出速度の環境応答特性を評価し、樹体内炭素動態と関連付けることで、地上部-地下部生態系間のつながりに着目した森林土壌炭素放出プロセスを定量的に解明することを目的とした。 本年度はコナラの成木や萌芽木を対象に、チャンバーの取り付けや測定機材の設置を行い、幹呼吸や土壌呼吸の測定を開始した。また、秋にはパルスラベリング実験を行い、樹体内の炭素動態を調べた。 幹のCO2放出速度は季節変化し、冬季に低く、夏季に高い傾向を示した。高温度帯(20~30℃)に属する6月~9月の幹のCO2放出速度に着目すると、後半の月よりも成長期である6, 7月に高い傾向を示した。また、幹のCO2放出速度は日内変化し、そのピークは14-19時あたりで示され、温度や日射量のピークよりも数時間ほど遅いといったタイムラグがみられた。一方、同位体パルスラベリング実験では、光合成によって吸収された13Cが、数時間で幹へと移動したことから、このタイムラグは光合成産物の炭素の移動時間によって説明できるのではないかと考えられる。さらに、長期観測による幹のCO2放出のδ13Cの変動は、落葉期間には定常し、展葉がはじまると再び減少をはじめることがわかった。 以上より、樹木のCO2放出速度のリアルタイム観測とパルスラベリング法による樹体内炭素動態の観測結果から、呼吸速度-環境因子関係のばらつきを説明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコナラの成木や萌芽木を対象に、チャンバーの取り付けや測定機材の設置を行い、幹呼吸や土壌呼吸の測定を開始した。幹のCO2放出速度は、季節変化し、冬季に低く、夏季に高い傾向を示した。高温度帯(20~30℃)に属する6月~9月の幹のCO2放出速度に着目すると、後半の月よりも成長期である6, 7月に高い傾向を示した。また、幹のCO2放出速度は日内変化し、そのピークは14-19時あたりで示され、温度や日射量のピークよりも数時間ほど遅いといったタイムラグがみられた。 また、秋にはパルスラベリング実験を行い、樹体内の炭素動態を調べた。同位体パルスラベリング実験では、光合成によって吸収された13Cが、数時間で幹へと移動したことが観測された。そのため、呼吸速度の連続データから検出されたタイムラグは、光合成産物の炭素の移動時間によって説明できるのではないかと考えられた。 以上より、樹木のCO2放出速度のリアルタイム観測とパルスラベリング法による樹体内炭素動態の観測結果から、呼吸速度-環境因子関係のばらつきを説明することができたことからおおむね順調に進展していると判断した。 その一方で、トラブルにより土壌呼吸データに大きな欠測が生じたことから地上部-地下部関係の解析をすることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き幹呼吸や土壌呼吸の観測を実施し、データを取得し蓄積する。本年度では土壌呼吸のデータに欠測が多かったため、地上部-地下部関係の解析をすることができなかった。野外での長期観測ではトラブルが多いため、今年度は毎週の調査にて対処する。 呼吸速度の観測に加えて、今後は、樹木の各部位の成長量の季節変化を詳細に観測する予定である。幹の成長量は、デンドロメータを設置し、肥大成長量を連続的に測定する。細根の成長量は、試験地にスキャナーボックスを設置し、土壌断面の画像を連続的に撮影し、画像解析から求める。季節をとおした樹木の呼吸速度と成長量の連続データを関連させて解析することで、季節的に変化する呼吸速度-環境因子関係のばらつきの評価を進めていく予定である。
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