研究課題/領域番号 |
19K20440
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
丹 佑之 東海大学, 清水教養教育センター, 講師 (90770909)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光散乱 / 海色 / リモートセンシング / 沿岸 / 植物プランクトン |
研究実績の概要 |
我が国の水産業・養殖業において重要な沿岸域における海色リモートセンシング技術を確立するためには,(1)沿岸海水による光散乱特性を測定する装置の開発,(2)沿岸海水懸濁物による光散乱特性を教師用データとして含めた次世代海色情報処理システム,が必要である. 本研究の目的は,光散乱特性を瞬時に計測できる試作機を改良し,植物プランクトン現存量の継続的な広域調査に用いる海色情報処理に用いる基礎的な教師データを構築することにある. 令和元年度は,本研究のコアとなる,蛍光雑音対策を中心とした試作光散乱計の改良を中心に行った:令和元年度前期から中期にかけて,高透過率な特定の波長光のみを通過する光学フィルタを用いて蛍光雑音対策を施した.フィルタホイールに計12可視域波長の光学フィルタを取り付け,入射光側と受光側にそれぞれ配置した.高精度な位置制御可能なステッピングモーターを用いて両光学フィルタを同期させ,センサに到達する蛍光雑音を遮断し,散乱光のみを受光出来るように改良した.令和元年度後期にかけて,試作機開発の際に確立した手法を用いて,改良光散乱計の補正・基本性能について評価した.具体的には,既知の光散乱特性を持つ分光用高純度メタノールを用いて,改良光散乱計の検出感度,測定精度ならびに安定性・再現性について評価した. 11月には,ドローンを用いた沿岸域におけるルーチン的な海色データの観測手法に関する論文を投稿し出版された.また,この論文内容に関し国際学会で発表を行った.これは,本研究の基礎的研究に位置づくものであり,次世代海色情報処理システム開発において重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提出した研究計画では,令和元年度中に改良光散乱計の基本性能評価と有効性の検証を完了する予定であった.しかし,改良測器の検出感度ならびに測定精度を検討したところ,蛍光雑音対策を施したことが主な原因と思われる信号雑音比の低下が確認された.受光光量シグナルの増加が重要であると判断し,光学機器の見直し・再選定,遮光性の向上,入射光量の増幅を行ったため若干遅れている.特に測定データの信頼性に大きく関わる迷光雑音対策に時間を要したことから「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度の推進方策は次の通りである.まず,最初に改良測器の最終動作確認実験を実施する.具体的には,標準Latex粒子による光散乱特性を複数回測定し,数値計算との比較結果を基に,最終的な改良光散乱計の有効性検証を実施する.その研究結果を国際論文として発表する.この計画の実行と並行して,既存の計測機器を整備・調整・補修し,研究計画の課題(2)に着手する.具体的には,駿河湾を中心とした沿岸海水による光学的特性の測定に取り組み,海色情報処理システム用の基礎データーベースの構築を目指す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗により購入物品を変更し、かつ、予定していた学会参加費を変更したため差額が生じた.計画では,受光センサの信号雑音比に問題が生じた場合,高感度な裏面入射型CCDエリアイメージセンサ(3段電子冷却式)を購入する予定であったが,安価な高性能・超高感度カメラを購入した.受光光量シグナルを増加させる必要があり,遮光性の向上,入射光量の増幅,迷光雑音対策が重要と判断し,光学機器等を見直し,再選定したため,高輝度プラズマランプの購入を見送った.また,学会参加費,論文投稿費が不要であった. このような状況から2020年度は,計測機器備品として光学部品や試薬,採水分析試薬や消耗品に使用予定である.また,現在準備中の英語論文の英文校正費,投稿費に支出予定である.また,国内外の学会参加費も支出予定である.
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