研究課題/領域番号 |
19K20442
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山田 圭太郎 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (30815494)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 花粉化石 / 安定同位体比 / 古気候 |
研究実績の概要 |
本研究では、氷床や海洋などの地質学的記録との精密な年代対比が可能な福井県水月湖の年縞堆積物に対し、花粉化石の高純度濃縮技術を用いることで、堆積物中の花粉化石の水素・酸素安定同位体比を測定し、過去15万年間の古気候変動の復元を目指す。2年目にあたる2020年度は、堆積物試料からの花粉化石の抽出及びその安定同位体比測定、データ解釈のための現生花粉の収集とその安定同位体比測定を中心に行った。 堆積物の分析では、柱状試料からのサブサンプリングを進めたほか、一部からは花粉化石の抽出及び同位体比測定を行った。得られた同位体比データは時代とともに大きく変動し、氷床の酸素同位体比変動と同調的な変動を示した。しかし、花粉化石の安定同位体比分別メカニズムについてはまだ不明な点も多く、現生花粉の安定同位体比データが厳密なデータ解釈のためには重要であることが改めて浮き彫りとなった。また、花粉化石の抽出技術についても開発も進め、同一試料から抽出できる花粉化石の量を最大で30%ほど増やすことができた。当初、体積当たりの抽出可能な花粉化石含有率が低い表層の堆積物や氷期の堆積物については高解像度分析が難しいと考えていたが、本技術を使用することで、これらの堆積物についても、当初の想定を上回る解像度で分析ができる可能性が高まった。 現生花粉の採取・分析は、4-6月にかけて、2020年度前半は新型コロナウイルスによる感染症拡大に伴い、協力研究機関も含めて研究活動が大幅に制限された。しかしながら、研究室周辺地域での採取のほか、各地の研究者や機関などの協力によって、2020年度全体としてはおよそ800点の試料を収集することに成功した。スギを中心に安定同位体比の分析を行ったところ、気候因子との明瞭な相関関係が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度前半は新型コロナウイルスによる感染症拡大に伴い、協力研究機関も含めて研究活動が大幅に制限されたほか、協力研究機関で測定機器のトラブルが相次いだ。そのため、当初予定していた堆積物試料の花粉化石安定同位体比分析を進めることができなかった。また、当初計画では実験補助員の雇用によって研究を加速させる予定であったが、現状を鑑み、延期とした。いっぽうで、抽出や測定技術の効率化や安定化が進んだため、次年度以降の分析精度や効率の向上が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に引き続き、堆積物からの花粉化石の抽出とその安定同位体比の測定、現生花粉の収集とその安定同位体比測定を行う。ただし、2020年度の分析が当初計画から遅れていることを鑑み、過去15万年間全体の捜査的分析を優先するとともに、気候が大きく変動する層準を集中的に分析することで、当初の目的を達成したい。同時に、得られた安定同位体比データの解析も行い、氷床や海洋、鍾乳石の記録との精密対比により、気候システムの挙動を総合的に理解することを目指す。また2021年度から実験補助員の雇用も進め、研究の加速を狙う。 現生花粉の収集については、定点採取地点などにおいては継続するものの、全体としては規模を縮小し、現生花粉の安定同位体比分析に集中する。これまで分析を行ってきたスギ属の花粉については、国内各地点の試料をさらに高密度に分析し、気象記録と比較することで、各気候因子が花粉の安定同位体比に与える影響の定量化を目指す。また2020年度までに広範囲で収集することができたハンノキ属、ヒノキ属、マツ属などを中心に開花時期の異なる属についても捜査的分析を行う。得られた結果をもとに化石花粉の安定同位体比変動記録の解釈を進める。 これらの結果については、順次、学会での発表を進めるとともに、論文の公表を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルスによる感染症の流行に伴い、研究活動が制限された結果、当初予定していたフィールドワークが一部行えなかった。また、研究補助員の雇用も計画していたが、現状を鑑みて延期した。その結果、当初の計画を下回る支出となった。 2021年度は当初計画に加え、前年度に行えなかったフィールドワークを追加で行うほか、研究補助員の雇用を計画しており、本差額から支出を計画している。
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