研究課題/領域番号 |
19K20448
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
風呂田 郷史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (30804778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 沿岸生態系 / 陸源有機物 / アミノ酸 / 窒素同位体比 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海洋のバイオマスが集中する沿岸地域の生態系が、河川などを通じた陸源有機物の供給によってどの程度支えられているかを評価することである。特に、高等植物と藻類のアミノ酸窒素同位体比の違いを利用することで、陸源有機物供給の重要性を高い確度で評価する。本研究が成功すれば、沿岸生態系への陸源有機物供給の重要性を評価することが可能となり、持続可能な水産資源の管理にも重要な知見を提供できると考えられる。 沿岸地域の中でも、陸域と海域の物質循環の交差点である干潟環境に焦点を当てて研究を実施する。令和1年度(平成31年度)の研究計画は、干潟地域の低次捕食者のアミノ酸窒素同位体比を測定し、陸源有機物の摂食率を明らかにすることであった。そのための研究環境の整備を行い、分析試料の前処理を完了させた。分析完了には至らなかったものの、これらの成果に基づき次年度以降はアミノ酸の窒素同位体比分析を効率的に実施することが可能となった。 また、堆積物中に含まれる有機物は低次捕食者の主要な餌候補であるため、堆積物中の有機分子の解析を実施した。その結果から、堆積物中に含まれる藻類および高等植物起源の有機物組成を明らかにするとともに、海洋への陸源有機物の供給パターンについて考察を行った。 これらの結果に加え、次年度の研究に必要な分析試料の採取を実施した。次年度は干潟環境の高次捕食者が、食物連鎖を通じて間接的にどの程度の陸源有機物を摂食しているかを調査する予定である。そのために必要な分析試料の採取を完了させた。 上記の結果を踏まえ、次年度は効率的にアミノ酸の窒素同位体分析を実施できると考えられる。それらの結果を取りまとめ、沿岸生態系への陸源有機物供給の重要性を誌上にて論文発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度中に干潟環境の低次捕食者のアミノ酸窒素同位体比分析を完了させる予定であったが、完了には至らなかった。一方で、効率的に試料の前処理を実施するための研究環境を整備することができた。そのため、次年度以降はスムーズな分析を実施することが可能と考えられる。また、野外調査と試料採取は当初の予定通りに実施することができている。これらのことを総括すると、現在まで進捗状況は「やや遅れている」と評価することが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果により、分析を効率的に実施するための研究環境を整備することができた。また、研究に必要な分析試料は概ね採取することができている。ここまで成果を基に、次年度は効率的なアミノ酸の窒素同位体比分析を進めていき、沿岸生態系への陸源有機物供給の重要性の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は生物試料のアミノ酸窒素同位体比分析に遅れが出たため、分析に必要な消耗品や試薬等の出費が予定よりも少なかった。次年度は今年度の遅れを含めた研究試料の分析を効率的に進めていく予定である。そのため、当初の計画よりも物品費が増える計画である。これらの資金として有効に活用する計画である。
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