研究課題
放射線による心疾患は致死性が高く、放射線治療と被ばく管理において重要な課題となる。また、放射線による心血管疾患に、血管内皮細胞の細胞老化が深く関わると考えられるが、その分子機構は不明である。本研究の目的は、被ばくによる心血管疾患の病態解明を目指し、放射線誘導性NOによる細胞老化機構の解明である。2022年度では放射線によるSREBP-1抑制経路の検討を実施した。その結果、DNA損傷応答が細胞内脂質・コレステロール代謝に影響を及ぼすことが明らかとなった。コレステロールは細胞膜の脂質ラフトを構成する脂質としての機能をもつ。脂質ラフトを構成する他の脂質への介入がMAPK経路やSTAT経路に影響を及ぼすことを明らかにしたことから、放射線によるDNA損傷応答が細胞膜などの機能を制御することが示唆された。当初の研究計画では、マウス被ばくモデルにおける長期間の観察を予定していたが、コロナ禍もあり実施には至らなかった。しかし、血管内皮細胞の老化機構に関する新知見を得ることができたため、研究全体として自己評価は高い。また、今後は血管内皮以外の細胞における老化機構を検討する予定である。
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