研究課題/領域番号 |
19K20453
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
谷 幸太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高度被ばく医療センター 計測・線量評価部, 研究員(定常) (40736071)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内部被ばく / アクチニド元素 / 体内動態モデル |
研究実績の概要 |
2017年6月にアクチニド元素であるPu及びAmの吸入事故が国内で発生した。内部被ばく線量を評価するためには、摂取したPu及びAmの化学形や粒径を推定し、肺残留量や尿中/便中排泄量の実測値を体内動態モデルによって再現する必要がある。 本研究の目的①である「最近の知見を反映した体内動態モデルを解析し、事故後の実測値に基づくより現実的な粒径や化学形の推定を可能とすること」に関して、Pu及びAmに関する最新の生理学的物質動態モデル(ICRP Publ. 141)を参照し、呼吸気道モデル(ICRP Publ. 130)及び消化管モデル(ICRP Publ. 100)と組み合わせて、各臓器・組織における放射能の時間変化を表現する連立微分方程式を数値的に解析した。これにより、吸入摂取したPuやAmについて、さまざまな化学形(硝酸塩、酸化物等)や粒径や対する肺残留量や尿中/便中排泄量の予測が可能となった。 本研究の目的②である「血液中のPu及びAmの尿中排泄を促進させる体内除染剤(DTPA)の投与に伴って採取された多数の生体試料を分析し、内部被ばく線量の低減効果を評価するための体内動態モデルを構築すること」に関して、尿試料及び便試料の前処理、核種の化学分離、電着試料のα線計測に着手した。また、DTPAの投与による影響が小さい初期の実測値を対象として、摂取したアクチニド元素の化学形及び粒径を推定する手順を検討した。つまり、粒径に対する依存性が小さい「肺残留量に対する尿中排泄量の割合」から化学形を決定し、次に化学形と粒径の両方に依存する「肺残留量に対する便中排泄量の割合」から粒径を決定することで、体内動態モデルによる肺残留量及び尿中/便中排泄量の予測値が、実測値を良く再現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって、目的①である「最近の知見を反映した体内動態モデルを解析し、事故後の実測値に基づくより現実的な粒径や化学形の推定を可能とすること」を完了したため。また、目的②である「血液中のPu及びAmの尿中排泄を促進させる体内除染剤(DTPA)の投与に伴って採取された多数の生体試料を分析し、内部被ばく線量の低減効果を評価するための体内動態モデルを構築すること」に関しても、予定通りに尿試料及び便試料の分析に着手したため。
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今後の研究の推進方策 |
目的②である「血液中のPu及びAmの尿中排泄を促進させる体内除染剤(DTPA)の投与に伴って採取された多数の生体試料を分析し、内部被ばく線量の低減効果を評価するための体内動態モデルを構築すること」に関して、尿試料及び便試料の分析を継続し、完了する。また、DTPAの体内動態モデルを新たに構築し、目的①で作成したアクチニド元素の体内動態モデルと組み合わせることにより、DTPAの投与によるアクチニド元素の尿中への排泄促進を再現する。すなわち、血液(及び間質液)に相当するコンパートメントにおいて、Pu/Am及びDTPAが同時に存在する場合にPu-/Am-DTPAが生成され、それが尿中へと排泄される過程をモデル化する。DTPAの血液・間質液間の移行速度、Pu-/Am-DTPAの反応速度などのパラメータについて、尿試料及び便試料の分析結果との比較により決定することで、DTPAによる内部被ばく線量の低減効果の評価を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年4月に参加予定の国際学会が中止となり、事前の参加費の支出が不要になったため。当該助成金については、代わりになる学会に参加する場合、それに充てることとする。
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