研究課題
2022年度も前年度に引き続いてTP63のノックダウンによる放射線応答の変化について調査し、TP63のアイソフォームの一つであるΔNp63αが細胞の放射線抵抗性の一因となっていることを明らかにした。このたんぱく質はp53ファミリー遺伝子の一つであり、長い間p53機能を競合的に阻害するとされてきたが、本研究の結果、ΔNp63αはp53下流であるBaxおよびp21などの放射線応答関連タンパク質の発現を抑制していることが明らかとなり、それによって放射線誘導アポトーシスを抑制することがわかった。また、このことを確認するためヒトiPS細胞をBMP4とレチノイン酸処理によりケラチノサイトへ分化させ、entopicallyにΔNp63αを発現させた。このヒトiPS細胞由来ケラチノサイトに対し、X線を照射して放射線応答を観察したところ、上記の結果と一致して、ΔNp63αを発現したヒトケラチノサイトはヒトiPS細胞に比べて著しい放射線抵抗性を獲得したことがわかった。この結果からΔNp63αは皮膚、乳腺を含む基底上皮の放射線抵抗性の原因となっていることが示唆された。以上の成果は2022年6月にサンフランシスコで開催されたInternational SOciety for Stem Cell Researchで発表し、さらに同年11月に査読付き海外誌のRadiation Oncologyで論文として発行した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Radiation Oncology
巻: 17 ページ: 183
10.1186/s13014-022-02139-7