研究課題
本研究の目的は、思春期前のフタル酸エステル類および類縁化合物の曝露による第二次性徴発来への影響を明らかにすることである。北海道スタディのコーホートの参加者のうち、7歳で回収した尿検体および12歳質問票の思春期発来の身長スパート、乳房と陰毛の発育、初潮のいずれかの項目に回答が得られた女児512名を研究対象とした。思春期前の曝露評価として7歳時点のフタル酸エステル類および類縁化合物の尿中代謝物濃度をLC-MS/MSで測定した。思春期発来のアウトカムは身長スパート、乳房発育、陰毛発育、初潮の有無を質問票で評価した。512名の女児のうち、身長スパートが見られたのは全員(100%)、乳房の発育は405名(97%)、陰毛の発育は294名(73%)、初潮は234名(56%)であった。また、各発育の最小年齢および平均年齢は、乳房発育は最小6歳、平均10.7歳、陰毛発育は最小9歳、平均11.1歳、初潮は最小8.9歳、平均11.2歳であり、日本人の平均年齢とほぼ同程度であった。尿中代謝物濃度はDEHPの二次代謝物MECPP濃度およびDnBP代謝物のMnBP濃度(検出率)が最も高く、それぞれ32.2ng/mL(100%)、32.1ng/mL(100%)であり、次いでDEHP代謝物のMEHHP22.0ng/mL(100%)であった。12歳時点で胸のふくらみがあると答えた児のMnBPおよびMEHHPの中央値濃度は、ない児と比べて高く、初潮がある児はない児と比べてMnBP、MEHHP、MECPPの中央値濃度が高い傾向であった。本研究結果は、思春期前のフタル酸エステル類の曝露がその後の思春期発来を早めるという諸外国の先行研究と一致していた。しかし、7歳の一時点の尿での曝露評価であるため結果の解釈には注意が必要である。今後は7歳児の曝露評価が完了した他の化学物質との複合曝露による影響を検討する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Environment International
巻: 160 ページ: 107083 - 107083
10.1016/j.envint.2022.107083
International Journal of Hygiene and Environmental Health
巻: 234 ページ: 113724 - 113724
10.1016/j.ijheh.2021.113724
Environmental Health and Preventive Medicine
巻: 26 ページ: 59 - 79
10.1186/s12199-021-00980-y
https://www.cehs.hokudai.ac.jp/research