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2020 年度 実施状況報告書

全ゲノム解析による河川水中の薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K20461
研究機関京都大学

研究代表者

五味 良太  京都大学, 工学研究科, 助教 (30794284)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード薬剤耐性菌 / 腸内細菌科細菌 / ゲノム解析
研究実績の概要

抗生物質が効かない細菌(薬剤耐性菌)は、河川水、湖水、海水といった環境水中に広く存在することが知られている。しかし、それら環境水中の薬剤耐性菌についての詳細な遺伝学的知見は十分に得られていないのが現状である。本研究では、環境水中から薬剤耐性腸内細菌科細菌を単離してゲノム配列を決定し、薬剤耐性遺伝子の種類やそれら遺伝子のゲノム中での存在状態についての知見を得ることを目的とした。
2020年度までに合計72の湖水および河川水サンプルを採取し、カルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ腸内細菌科細菌を合計21株単離した。それらの菌株についてショートリードによる塩基配列決定を行い、12株についてはさらにロングリードによる塩基配列決定も行った。その結果、11株について完全長のゲノム配列を得ることができた。ゲノム配列に基づいて菌種を決定したところ、それらの単離した菌株の中には新しい菌種に属する菌株が存在することがわかり、さらにカルバペネム分解酵素の新たなバリアントを保有する菌株が含まれることもわかった。新たなカルバペネム分解酵素のバリアントについてその周辺の塩基配列を解析したところ、報告例のない周辺構造(耐性遺伝子周辺の挿入配列や遺伝子の存在状態)中に組み込まれていることがわかった。これらのことから、環境水中のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌は病院環境とは異なる性質を持つことが予想された。
また、関連して、ショートリードによる塩基配列決定結果のみでのデータ解析を効率的に進める手法の開発にも取り組んだ。その結果、Krakenというメタゲノム解析用のソフトウェアを用いることで、ショートリードによって決定された塩基配列から高精度でプラスミド配列を抽出できることをつきとめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

採取したサンプル中の薬剤耐性菌数が想定より少なく、当初の目標より単離できた菌株数は減ってしまったものの、11株についての完全長塩基配列を取得することができた。また、完全長の塩基配列を決定することができなかった菌株についても、効率的にデータ解析を行うための手法 (配列中から高精度でプラスミド配列を取得する手法)を開発することができた。

今後の研究の推進方策

今後、得られた塩基配列のさらなる解析を進める。具体的には、薬剤耐性遺伝子が挿入されたプラスミドや染色体領域の解析を行い、それら薬剤耐性遺伝子が伝達しやすい状況にあるのか、同定する。また、菌種ごとに全ゲノム一塩基多型に基づく系統樹を作成し、単離した菌株と臨床株 (データは公共データベースより取得)との間の系統学的な近縁性を決定する。病原遺伝子が詳細に定義されている菌種については、病原遺伝子の保有パターンの比較も行う。
2020年度までは遺伝子解析を主に進めており、今後は薬剤感受性試験などを通して表現型についても解析を進めていく。また、カルバペネム分解酵素の新たなバリアントについては、遺伝子のクローニングなどによって抗菌薬分解特性を把握し、既存のバリアントとの比較解析を行う。
決定した塩基配列については、公共データベース (DNA Data Bank of Japan)への登録も進め、世界中の研究者が恒久的にデータにアクセスできるようにする。

次年度使用額が生じた理由

得られた塩基配列データの質が良く、追加解析が必要なかったため、塩基配列の決定に関わる費用が当初計画より安く済んだ。次年度には、塩基配列を決定した菌株の表現型に関わる試験(薬剤感受性試験など)を行う予定であり、それら実験に必要な試薬や培地、抗菌薬などを購入する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Monash University(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Monash University
  • [雑誌論文] Detection of plasmid contigs in draft genome assemblies using customized Kraken databases2021

    • 著者名/発表者名
      Ryota Gomi, Kelly L. Wyres, Kathryn E. Holt
    • 雑誌名

      Microbial Genomics

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.1099/mgen.0.000550

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 環境水中に潜む耐性菌のモニタリング2021

    • 著者名/発表者名
      五味良太
    • 学会等名
      第95回日本感染症学会・学術講演会 第69回日本化学療法学会総会 合同学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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