本研究では、河川水と湖水からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌を単離し、ショートリードシーケンシングとロングリードシーケンシングにより、ゲノム配列の決定を行った (注:シーケンシング=塩基配列を決定すること)。その結果、これらのカルバペネム耐性菌は、報告例が少ないカルバペネマーゼ(FRI、GES-5、IMI、SFC、SFH-1)を産生することをつきとめた (注:カルバペネマーゼ=カルバペネム分解酵素)。これらのうち、SFCとSFH-1については、1998年にポルトガルで単離されたSerratia fonticolaからしか報告例がなく、とても珍しいカルバペネマーゼであることがわかった。また、本研究で初めて、SFCとSFH-1が染色体上のGenomic Island上に近接して存在することを特定した。さらに、本研究では、新しいカルバペネマーゼバリアントであるFRI-11、SFC-2、IMI-22、およびIMI-23を報告し、さらにその周辺構造についても特定した。 また、上記研究とは別に、下水から単離したコリスチン耐性遺伝子mcr-3.1を保有する大腸菌株のゲノム配列を、ショートリードシーケンスとロングリードシーケンスを用いて決定し、保有薬剤耐性遺伝子やその周辺構造を同定した。さらに、関連して、ショートリードシーケンスによる塩基配列決定結果のみで、データ解析を効率的に進める手法の開発にも取り組んだ。その結果、Krakenというメタゲノム解析用のソフトウェアを用いることで、ショートリードによって決定された塩基配列から高精度でプラスミド配列を抽出できることをつきとめた。
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