2021年度は、昨年度までに取得したマイクロバイオーム解析の結果を整理するとともに、本年度新たに解析したデータも統合し、凍土氷中の微生物(主にバクテリアとアーキアの原核生物)の系統的多様性・新規性とその分布特性を評価した。本年度の結果もこれまで明らかにしてきた傾向と整合的で、本研究で標的とした地域の凍土氷に広く分布するActinobacteria 門細菌、また一部の試料のみで準優占する希少系統群(Acidobacteria門やChloroflexi門・Gematimonadetes門)やアーキア(主にアンモニア酸化アーキアとメタン生成アーキア)の存在が見出された。一方、サイズ分画により極小微生物を標的とした群集構造解析では、Patescibacteria候補門等の未培養微生物群も見出された。また、高分子DNAの回収効率の課題で一部の試料しか実施できなかったが、凍土氷中の環境DNA の網羅的ゲノム解読(メタゲノム解読)を実施し、そこから個々の微生物ゲノムを再構築することに成功した。現在、その代謝機能遺伝子の解析に取り組んでおり、先述の微生物系統群の分布パターンとあわせて、凍土融解時に現場環境で検出されうる微生物の系統と生理生態特性を明らかにする。また並行して、国際誌への投稿論文を準備中である。また、昨年度の研究推進方策に記載の通り、凍土氷からの微生物分離培養に着手したところ、公共のデータベース上に近縁な基準菌株が存在しないAlphaproteobacteria綱の新規細菌、また、過去に氷床環境から検出された極小微生物に近縁なBetaproteobacteria綱の新規細菌等を単離することができた。分離菌株の一部については、増殖特性や生理性状の解析、ゲノム情報解析が終了し、現在論文を国際誌に投稿し査読中である。
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