微小粒子状物質(PM2.5)は人体への健康影響が懸念されており,これまで様々な環境対策が進められてきた.PM2.5の約3割を炭素成分が占めており,中でも有機炭素は発生源から直接排出される一次粒子と揮発性有機化合物等が大気中で反応してできる二次粒子の両方を含んでおり,数千種類の成分が存在する.そのため,発生源が非常に複雑であり,未だに実態が解明されていないのが現状である.そこで本研究では,有機炭素の中でも水溶性を示す水溶性有機炭素に着目し,炭素安定同位体比という指標を用いて実態を解明することを目的とする.水溶性有機炭素に含まれる炭素安定同位体比を測定した研究例は短期間の観測事例が多いため,本研究は長期間の大気観測を行うことで実態を解明することを目指す. 2023年度は,水素及び酸素安定同位体比測定の検討を行った.水素及び酸素の安定同位体比は植物の生育環境や地域の違いを示すことが分かっている.熱分解型元素分析計/安定同位体比質量分析計を用いて,水素及び酸素安定同位体比の分析方法構築を行った.安息香酸標準試薬を3回連続で測定した結果,3回測定の標準偏差は水素安定同位体比が3.7‰,酸素安定同位体比が0.4‰と高精度な分析であった.最終年度であるため,これまで得られた結果についてまとめた.
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