PM2.5の約3割を占める水溶性有機炭素は,発生源が多く生成プロセスが複雑であるため,未だに実態が解明されていない.本研究では,日本の2地点で2年間の大気観測を実施し,水溶性有機炭素の炭素安定同位体比を測定することで実態の解明を目的とした.日本海側の農村地域では,水溶性有機炭素の炭素安定同位体比は明瞭な季節傾向を示し,2019年2月から4月にかけて水溶性有機炭素の炭素安定同位体比は最も重い値が観測され,トウモロコシなどのC4植物燃焼物が海外から長距離輸送されたことを示唆していた.同位体を用いた手法は,水溶性有機炭素の発生源と大気プロセスを解明するのに潜在的に有用な手法であることを示した.
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