研究課題/領域番号 |
19K20467
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岡崎 琢也 明治大学, 理工学部, 助教 (60772556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光ファイバーセンサー / 鉄フェナントロリン錯体 / イオン会合体 / ペーパー分析デバイス |
研究実績の概要 |
環境水の分析において,夾雑物の影響を受けない高い選択性をもつ簡易分析法の開発は重大な課題である。本研究では,ペーパー分析デバイスと光ファイバー全反射減衰法を融合したデバイスを作製し,多様な環境水質に対して前処理なしの滴下のみで分析値が得られる新しい簡易分析法の開発を目指す。 本年度は,鉄フェナントロリン錯体を分析モデルとしてセンサー応答の評価を行った。まず光ファイバーのコアを露出させてセンサー領域とし,光源と分光検出器を接続した。シリカで構成される光ファイバーコアはシラノール基に起因した負電荷を帯びるため,正に帯電した分析物を吸着することで光吸収応答をエバネッセント波の吸収から計測できる。しかし,鉄(II)と反応させて生成した鉄フェナントロリン錯体は吸着が弱く,吸収スペクトルが得られなかった。そこで,ドデシル硫酸ナトリウムを添加し,鉄フェナントロリン錯体をイオン会合体として吸着させることで検出に成功した。その添加濃度や時間の影響を明らかにし,鉄(II)イオンの初期濃度に対する検量線を得た。検量線から得られる鉄(II)の検出感度は0.1 ppmオーダーであり,既存の鉄フェナントロリン錯体吸光光度法と同等の感度を有していた。続いてこれをペーパー分析デバイスに応用した。試薬溶液を含んだろ紙を乾燥させて,反応場とした。またこれを光ファイバーコアに付着させて,鉄を含む溶液を滴下した結果,濃度に依存した光応答が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,光ファイバーセンサーを用いた既存の吸光光度法に基づく定量に成功した。界面活性剤の吸着に基づく全反射減衰スペクトルの測定は,このセンサーに幅広い応用性を与える。また,ろ紙を利用した分析物の呈色と計測を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は1)吸収波長の違う分析物の多成分一斉分析,2)フッ素を対象とした分析条件の確立,3)実際の環境分析への応用を進めていく。1では,作製したろ紙デバイスを連続して光ファイバーコアに取り付けて,同一の水試料から複数の分析結果が得られる仕組みを構築する。3では,現時点で河川水または温泉水を想定しており,分析物の濃度が低い場合は添加回収実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は最終年度ではないため,特別に調整はしなかったことから差額が生じた。 試薬や消耗品の購入に充てる予定である。
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