環境水の分析において,夾雑物の影響を受けない高い選択性をもつ簡易分析法の開発は重大な課題である。本研究では,ペーパー分析デバイスと光ファイバー全反射減衰法を融合したデバイスを作製し,滴下のみで分析値が得られる新しい簡易分析法の開発を目指す。本研究では,鉄フェナントロリン錯体法に基づく鉄(II)の分析をワンステップで行えるセンサー技術の開発を行った。 実験では光ファイバーのコアをむき出しにしたものをセンサー母体とし,反応試薬を含侵させたろ紙をコアに接するように配置するようにした。ろ紙にはフェナントロリンと陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムが含侵されている。滴下した試料に含まれる鉄(II)がフェナントロリン錯体を形成し,ドデシル硫酸とイオン会合対を形成することで光ファイバーのコア表面に分配し,センサーによる吸収スペクトルが得られる。ろ紙はそれ自体が陽イオンの高分子に対する吸着能を持っているため,反応試薬の前にろ紙の流路を作製することで妨害となる陽イオン性の高分子(特にモデル色素のエチルバイオレット)の影響を避けることができた。これらの技術を,採水された地下水および河川水に応用した。実験では添加回収実験を行い,添加に対応した鉄(II)濃度の測定値が得られた。
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