本研究課題では身の回りの暮らしに潜む電磁界リスクを正しく理解するためのAR可視化システムの開発を行った。最終年度はこれまでの成果をもとにヘッドマウントディスプレイ(以下 HMD)を用いたAR可視化システムの開発を中心に進めた。可搬性をより高めるためにはシステムを構成する機器を減らし軽量化を図る必要がある。研究期間の前半ではマーカレスAR技術や機械学習による走査姿勢の追跡法を用いることによりシステム構成をシンプルにすることができたが、最終年度は電磁界センサで測定した電磁界強度をHMD内の仮想空間上のオブジェクトとして表示することで,可搬性をさらに改良することができた。研究開始当初かかげていた、「より手軽に」「より正確に」そして「より効果的に」可視化することで、電磁界の健康への影響を正しく理解することができるユーザフレンドリーな測定システムの実用化を目指すという目的は十分達成できた。 また、今後利用の普及が予想されるミリ波帯の通信による人体表面での電力吸収率の計算についても研究を進めた。理想的な微小ダイポールアンテナを人体表面に近づけた際には電力吸収率が100%に近づくことをFDTD法によるシミュレーションで明らかにし、アニメーションによる可視化にも成功した。これらの成果は実用アンテナを設計する際に人体への吸収電力を見積もる際の理論的な根拠として利用することができ、ミリ波帯電磁波のさらなる普及に貢献できるであろう。これらの成果はEMC Japan/APEMC Okinawa 2024 にて発表予定である。
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