研究課題/領域番号 |
19K20474
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小山 光彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50794038)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタン発酵 / アンモニア除去 / 代謝物制御 / 微生物叢 |
研究実績の概要 |
窒素成分を豊富に含有する有機性廃棄物のメタン発酵処理では、アンモニアが高濃度に蓄積して微生物の活性を阻害するため、発酵過程におけるアンモニア除去技術の確立がプロセス高効率化の重要な課題である。本研究は、アンモニアを発酵槽内で“メタン発酵微生物を阻害せずに”ストリッピング除去する新規メタン発酵プロセスを研究開発する。高温メタン発酵においてメタン発酵代謝物の生産と消費/除去のタイミングを制御することにより、発酵槽内を短時間だけ高pH環境にして発酵槽内のアンモニア低減と微生物の維持を可能にすることを目指す。 2019年度では、メタン発酵を阻害しないアンモニアストリッピング条件を明らかにするために、異なるpH条件、暴露時間、発酵温度において回分メタン発酵実験をおこないメタン生成活性を比較した。中温条件(37℃)ならびに高温条件(55℃)でそれぞれ約100日間馴養してメタン生成が安定したメタン発酵汚泥をpH8.5に短時間暴露させ、それぞれ酢酸資化メタン生成活性を調べた。その結果、中温条件ではメタン生成阻害はみられなかったが、高温条件では高pH条件に暴露する時間の増加に伴ってメタン生成量が顕著に低下することが明らかとなった。微生物を阻害する遊離アンモニアの濃度は温度とpHに依存するため、高温条件ではpH上昇に伴って遊離アンモニア濃度が増加してメタン生成古細菌を阻害した可能性が示唆された。 上記テーマと並行して、バイオガス曝気によるアンモニア除去特性を明らかにするため、55℃においてメタン発酵汚泥に窒素ガス(実装置ではCO2除去したバイオガスを用いる)を曝気し、アンモニア除去特性を評価した。溶存無機炭素の除去に伴いpHが上昇し、その後5時間の窒素曝気によりアンモニアが最大約40%除去された。メタン発酵微生物への影響を最少化するためには、曝気時間の短縮が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、中温条件で短時間高pH環境がメタン発酵を阻害しなかったことから、高温条件においてもメタン生成古細菌を阻害しないアンモニアストリッピング条件が見いだされることを想定していたが、これまでのところ、メタン生成阻害を起こさない条件を見出すことはできていない。先行研究で報告されているMethanobacterium thermoalcaliphilum等の好アルカリ性の高温メタン生成古細菌が増殖・定着すれば、アンモニア阻害効果が軽減される可能性が考えられた。そのため、本実験で使用する高温メタン発酵汚泥の馴養過程において、好アルカリ性の高温メタン生成古細菌を増殖・定着させる操作を検討する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
好アルカリ性の高温メタン生成古細菌を増殖・定着させるため、pHを8以上に維持して高温発酵汚泥を馴養して実験に供する。一方、より短時間で高効率アンモニア除去を達成するために、①60℃以上の高温条件でのアンモニア除去、②窒素曝気条件(気泡サイズ、曝気速度)の最適化、をおこなう。それに伴い、高温汚泥の馴養についても、当初の55℃に加えて60℃以上の高温条件を加えておこない、アンモニアストリッピングに伴う高pH条件がメタン発酵プロセスに及ぼす影響を明らかにしていく。これらの検討により、メタン発酵を阻害しないアンモニアストリッピング条件が明らかになれば、当初の計画通り、バイオガス曝気と原料供給による短時間・高pH環境の制御条件の検討、ならびに、本プロセスの長期継続性を明らかにするための半連続実験を実施する。もしいずれのストリッピング条件でもpHが上昇する(=遊離アンモニア濃度が増加する)限りメタン発酵阻害が避けられないことが明らかとなれば、本プロセスにおいてメタン発酵を阻害しないpH範囲の探索ならびにpH上昇を最少化する操作の検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にアンモニアストリッピング実験を継続するための物品を購入予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う研究室の閉鎖により実験を中断したため、次年度使用額が生じた。本年6月より実験再開を予定しており、当初計画していた物品購入を進める予定である。
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