窒素成分を豊富に含有する有機性廃棄物のメタン発酵処理では、アンモニアが高濃度に蓄積して微生物の活性を阻害するため、発酵過程におけるアンモニア除去技術の確立がプロセス高効率化の重要な課題である。本研究は、高温メタン発酵においてメタン発酵代謝物であるCO2の蓄積と除去のタイミングを制御することにより、発酵槽内を短時間だけ高pH環境にして発酵槽内のアンモニア低減と微生物の維持を可能にするメタン発酵プロセスを開発した。CO2を除去したバイオガスの曝気によりpHが約10まで速やかに上昇してアンモニアが除去されるが、メタン発酵微生物を阻害する遊離アンモニア濃度が一時的に増加する。しかしながら、アンモニア除去直後にCO2を返送してpHを低下させることで遊離アンモニア濃度が高い期間を最小化することにより、この操作の直後に半連続運転を再開しても高いメタン生成が維持されることを見出した。アンモニアストリッピング操作をおこなったのち半連続運転を継続したメタン発酵槽について菌叢解析をおこなった結果、多糖の分解を担うことが知られているHungateiclostridium属細菌、酢酸生成と水素生成を担うAcetomicrobium属細菌、糖とペプチド分解ならびに水素生成が報告されているCoprothermobacter属細菌、酢酸生成菌であるThermoanaerobacter属細菌が優占していた。これらの結果から、メタン発酵の主要な基質分解経路を担うこれらの細菌群は短時間のストリッピング操作による遊離アンモニア濃度の増加に特に耐性が高い可能性が示唆された。
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