研究課題/領域番号 |
19K20476
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
今野 大輝 東邦大学, 理学部, 講師 (40825832)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フェムトリアクター / エレクトロスプレー / MOFs / ZIFs / 形態制御合成 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、新たに液中エレクトロスプレー法によって生じるフェムトリットル体積の液滴を反応場とする合成法(フェムトリアクター法)を用いたZeolitic Imidazolate Frameworks (ZIFs) 結晶の形態制御を試みるものである。初年度はまず、高圧直流電源やマイクロシリンジポンプ等から構成されるフェムトリアクター装置を自作で組み上げ、そしてZIF-67結晶 (コバルトイオンと2-メチルイミダゾールの錯体結晶) について、形態制御合成への適用可能性を検討した。 フェムトリアクター法における溶液濃度、印可電圧をはじめとする様々な合成条件が、得られるZIF-67の結晶形態に与える影響を、FE-SEMを用いた形態観察によって確認した。溶液濃度が高いほど粒子径が小さくなる傾向にあったが、これは従来のバルクスケール法と同様の傾向を示していることから、フェムトリアクター法による合成であっても、従来法と同様のメカニズムで結晶生成が起こっていることが明らかとなった。また印可電圧を大きくすると、結晶サイズが小さくなる様子が確認された。これは印可電圧が大きくなることで、フェムトリアクター法のエレクトロスプレーによって生じる微小液滴がさらに小さくなるためであると考えられる。さらにXRD回折法による結晶構造評価と窒素吸着法による細孔特性評価を実施したところ、いずれの合成条件で得られたZIF-67結晶についても、従来のバルクスケール法と同等程度の結晶性を有していることが確認でき、ZIFs結晶合成に対してフェムトリアクター法が適用可能であることを実証した。 またZIFs結晶の光触媒としての機能を確認するためにUV-Visを用いたKubelka-Munk変換法による吸収波長解析を行ったところ、λ=220-260 nm 程度のUV-C光に対して作用する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は界面反応場型フェムトリアクター装置を自作導入し、フェムトリアクター法によるZIF-67結晶の合成に成功している。さらに反応場として有機溶媒を使わなくとも(反応場が水であっても)、高い結晶性を保ったまま、ZIFs結晶の形態改善が可能であることを明らかにしている。さらには界面活性剤などの添加物を合成溶液中に投入せずとも、印可電圧の制御によって結晶サイズをコントロールできる可能性を新たに見出している。このようにエレクトロスプレーによって生じるフェムトリットル体積の微小液滴をMetal-Organic Frameworks (MOFs) 結晶の形態制御合成に適用しようとする本研究の成果は、これまでに報告例のない新規性に富む結果と言える。さらにZIFs結晶の吸収波長を実験的に解析しており、光触媒としての可能性を見出している。 以上のように、設備導入、合成実験、特性評価の観点から、順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はフェムトリアクター装置を自作導入し、ZIF-67結晶の形態制御合成に対して有効であることを実証することができた。今後は新たにZIF-8 (亜鉛-2-メチルイミダゾール錯体) 、ZIF-11 (亜鉛-ベンズイミダゾール錯体) 、ZIF-20 (亜鉛-プリン錯体)の形態制御合成を試み、合成可能なZIFs種の拡大を図る。また得られたこれらのZIFs結晶について、水質浄化剤としての液相吸着特性を明らかにする。石油化学工業排水中の難分解発がん性有害物質として問題となっている1,4-ジオキサンなどの含酸素化合物や、生活排水中に広く低濃度で存在する難分解性有害物質の1つであるPFOSなどの過フッ素化合物に対する吸着特性を確認し、結晶形態が吸着特性に与える影響を明らかにする。また光触媒反応試験も実施し、濃縮型光触媒としての可能性を確認する。
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