研究実績の概要 |
自然由来汚染土壌として,関東地方で採集された砂質のフッ素汚染土壌(フッ素27 mg/kg, 水溶出量0.16 mg/L)および3種類のヒ素汚染土壌(ヒ素15~180 mg/kg,水溶出量0.01~0.47 mg/L)を用いた。土壌中有害元素の化学形態を,Tessierらの化学的逐次抽出法で調べたところ,フッ素は有機物態と残渣態の割合が高く(43 %, 42%),ほか鉄マンガン酸化物態(9%),交換態(5 %),炭酸塩態(<1%)であった。フッ素汚染土壌に対し,pH 7のキレート剤(EDTA,HIDS)水溶液による洗浄を施したところ,たとえばHIDSにおいて原土壌に比べ,イオン交換態で5.3%から1.51%,Fe-Mn酸化物態で9%から<1%,有機物態で43%から12%と変化し,特に有機物態の減少が著しかった。同様に土壌中のヒ素は,残渣態が60%以上を占め,有機物態が6~10%, 鉄-マンガン酸化物態が15~30%, 炭酸塩態が<3%, 交換態が1%未満であった。キレート洗浄によって溶出率が大きかったのは,交換態及び炭酸塩態のヒ素であった。 フッ素及びヒ素は,キレート洗浄によって弱酸(pH 3)および弱塩基性(pH 11)でともに中性条件よりも除去率が大きくなる傾向があった。フッ素は土壌表面において,カルシウムやアルミニウムと難溶性塩を形成したり,鉄酸化物等の表面に静電的に吸着して存在すると考えられるが,酸性では,これらの金属酸化物等の溶解が,中性~塩基性条件下では,カルシウムとキレート剤の錯形成反応とそれに伴うフッ素の溶出が起こったと考えられる。ヒ素の除去は,酸性において鉄マンガン酸化物態ヒ素の担体である鉄酸化物の溶解、塩基性においては交換態や炭酸塩態のヒ酸イオンとして溶液中で安定化し,よりヒ素の抽出が促進されたと考えられる。
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