研究課題/領域番号 |
19K20477
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
澤井 光 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (30784962)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒ素 / フッ素 / 汚染土壌 / キレート剤 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,土壌中で陰イオン性有害元素の担体として働く鉱物(水和酸化鉄,水和酸化アルミニウム,炭酸カルシウム)にヒ素(280,132,800 mg/kg),フッ素(900,74,54,mg/kg)をそれぞれ担持した汚染土壌モデルを作成し,合成/生分解性キレート剤の水溶液による洗浄(キレート洗浄)効果を検証した。50 mMの各種キレート剤水溶液によるキレート洗浄によって,吸着層を構成する鉄やアルミニウム,カルシウムは,一部が溶解した。鉄やアルミニウム酸化物からなる吸着層の溶解量は,化学平衡計算ソフト(HySS2009)により計算したキレート錯体の条件錯生成定数と正の相関を示したことから,バルク溶液中での水溶性錯体の形成が吸着層の溶解に寄与するものと考えられる。またモデル汚染土壌からのヒ素,フッ素抽出量は,キレート配位子が存在しない条件と比較して概ね増大した。一方で吸着層を構成する鉄やアルミニウムの抽出量とヒ素/フッ素の抽出量は相関は不明瞭であった。吸着層の溶解に伴って溶液相へと移行したヒ素やフッ素が固相へと再吸着された可能性がある。合成した水和酸化鉄系モデルにキレート剤とヒ素の混合水溶液(それぞれ5 mM)を添加しヒ素の吸着等温線を作成したところ,各キレート剤間で飽和吸着量の差異が微小に留まった一方で,吸着平衡定数はヒ素の除去効果の大きなHIDSにおいて大幅に小さく,HIDSの存在により固相へAsV吸着が特異的に妨げられることを定量的に評価できた。HIDSによるヒ素汚染土壌のキレート洗浄では,洗浄液中のヒ素の再吸着が妨げられることでより大きな洗浄効果が得られたと考えられる。これは,表面に吸着したキレート剤分子内の残余のカルボキシル基や水酸基によって表面電荷が負に大きくなったためと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度計画に従い,土壌中で陰イオン性有害元素の担体として働く鉱物をモデル汚染土壌として合成し,合成/生分解性キレート剤(EDTA, DTPA,HIDS, EDDS等)間で起こるヒ素とフッ素の吸脱着,錯体生成,イオン交換反応と溶液条件(pH,塩濃度など)の関係をについて知見を得ることができた。また,等温吸着実験によって土壌鉱物へのキレート剤および陰イオンの吸着挙動を飽和吸着量や吸着定数等の吸着パラメータから明らかにし,ヒ素の吸着がキレート剤の有無により受ける影響を見積ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き,鉱物表面とフッ素の吸脱着にキレート剤が与える影響を明らかにする。また,自然由来のAs, F, Bを含む汚染土壌数グラムスケールに対して,生分解性キレート剤を主とする化学的洗浄剤による洗浄実験を行い,溶離液中の元素濃度をICP発光やイオン電極等で定量することでキレート洗浄効果を検討する。陰イオン性有害元素の溶離効果の高いキレート剤を探索するとともに,洗浄率とキレート剤,および土壌鉱物の化学的特性(吸着層を構成する金属との錯生成定数,pH,補助塩類,濃度)を紐付けて解析する。またこれまでに得られている陰イオン性有害元素の化学形態や土壌の鉱物組成,キレート剤と鉱物表面の反応モデル等の解析データを総合的に動員し,生分解性キレート剤によるキレート洗浄が最も効果的に有害元素を除去するプロセス条件を求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の出張や計測がCOVID-19流行の影響で取りやめとなり,必要経費を執行できなかったため。
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