本研究の目的は、液相吸着を支配する細孔特性、表面特性、粒子径を制御可能な多孔質炭素材料のカーボンゲルをモデル吸着剤に、化学的特性のバリエーションが豊富な色素をモデル吸着質に用いた吸着実験により液相吸着のメカニズムを詳細に解明することである。 初年度は主にカーボンゲルの細孔特性、最終年度は主に表面特性と粒子径が色素の吸着に与える影響を評価した。 レゾルシノール・ホルムアルデヒドゲルを前駆体とし、これを不活性雰囲気下で炭素化することで、カーボンゲルを合成した。前駆体ゲルを合成する際の触媒量を変えることで、異なる平均細孔径を有するカーボンゲルを得た。また、粉砕・分級により粒子径の異なるカーボンゲルを、酸処理により酸性官能基を持つカーボンゲルを得た。 異なる分子量を有する色素に対して、細孔径の異なるカーボンゲルを用いた液相吸着実験を行った。カーボンゲルに対する色素の吸着等温線はLangmuir型の吸着等温線に適合した。吸着等温線から求められる色素の最大吸着容量をカーボンゲルの細孔構造と比較するために、カーボンゲルに対する窒素の吸着等温線から、グランドカノニカルモンテカルロ(GCMC)法により細孔の積算表面積を計算した。その結果、色素が収容されると予想されるサイズの細孔の積算表面積と色素の最大吸着容量に比例関係が認められた。また、色素の分子量が大きくなると、比例関係が見られる細孔の下限が大きくなることから、分子サイズによって、色素が吸着する細孔の大きさが異なることも判明した。また、粒子径の異なるカーボンゲルを作製し、色素の吸着速度を測定したところ、吸着速度は粒子径が小さいほど顕著に大きくなるが、平衡吸着量は粒子径に依存しないことが判明した。今回の検討ではカーボンゲルの表面の酸性官能基は色素の吸着に大きく影響を与えなかった。
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