研究課題/領域番号 |
19K20489
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
法理 樹里 京都大学, 森里海連環学教育研究ユニット, 特定研究員 (90744756)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 福利 / well-being / 持続可能性科学 / 社会・生態システム / 自然環境保全 / 幸福感 |
研究実績の概要 |
本研究は、人間の心理的幸福感(福利:well-being)を高める沿岸域の自然資本の保全・管理に向けた戦略を構築するものである。自然と人間のよりよい繋がり方を模索し、沿岸域と共生する持続可能な社会を実現するためには、沿岸域の自然の恵みを享受することで得られる人間の福利の把握が重要となる。なぜならば、「福利」という心理的側面は、人間の行動や感情を喚起・継続させる要因となるからである。
初年度は実証的な観点から、①沿岸域の生態系サービスを享受することで得られる人間の「福利」の評価枠組みの検討、②沿岸域の生態系サービスを享受することで得られる人間の「福利」の地域特性の把握、③沿岸域の自然資本の保全・管理への戦略構築に向けた多様な主体による自然への投資のオプション提案の可能性を探った。
①に関しては、人間の福利を重層的に評価するデータ収集手法の開発に取り組んだ。人間の主観的評価を定量化する手法についての最新の研究動向を探るとともに、次年度以降に実施予定のアンケートに先立ち、沖縄県石垣市を調査フィールドとして、現地での配布式アンケートおよびインタビューを実施し、調査設計の改善を図った。②に関しては、沿岸域の生態系サービスを享受することで得られる「福利」の地域特性を把握するための調査を行った。結果、ミレニアム生態系評価(2005)で定義されている生態系サービスを享受することで得られる人間の福利の5つの要素以外に「地域への愛着」も重要な福利の規定要因になる知見を得た。③に関しては、事例地域におけるインタビューとグループワークを通じて得られた定性的なデータを参加者と協働で分析し、沿岸域の自然資本の保全・管理への戦略構築に向けたシナリオの作成を探索的に行った。作成されたシナリオを基に、沿岸域の自然資本の保全・管理への戦略構築のオプションを参加者とCo-designできる手法の構築を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究実施計画に照らし、調査研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した研究実施計画を粛々と遂行していく。研究が計画通りに進まない場合については、それが最も生じやすいと予想されるインタビューやグループワークといった手法について、適切な研究計画の絞り込みが行えるように配慮しながら研究をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算は計画通りに使用しており、今回の未使用額は誤差の範囲である。この未使用額は次年度(2020年度)に実施する調査の経費に充当する予定である。
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