本研究は、人間の心理的幸福感(福利:well-being)を高める自然資本の保全・管理に向けた戦略を構築するものである。
2022年度(最終年度)は,2021年度に引き続き地域レベルのボトムアップ的な観点から、①沿岸域・流域の生態系サービスを享受することで得られる人間の「福利」の評価枠組みの検討、②沿岸域・流域の生態系サービスを享受することで得られる人間の「福利」の地域特性の把握、③沿岸域・流域の自然資本の保全・管理への戦略構築に向けた研究者も含む多様な主体による自然への投資のオプション提案の手法を探った。
①に関しては、地域を限定した国内Webアンケートを実施し、データ解析の結果を基に人間の福利を重層的に評価するデータ収集手法のブラッシュアップを行った。②に関しては、ミレニアム生態系評価(2005)で定義されている生態系サービスを享受することで得られる人間の福利の5つの要素以外に、「地域への愛着(2019年の結果)」,「自然環境に対する畏怖(2020年の結果)」,「自然環境に対するなつかしさ(2020年の結果)」,「コミュニティ・アイデンティティ(地域との絆など))」や「使命感」および「義務感」(2021年の結果)と併せて「地域の自然環境および社会環境に対する主観的評価」も福利の規定要因になる可能性が示唆された。③ に関しては、今年度より対面での実施が可能となったグループワークやワークショップを通じて、多様な主体より得られた意見を参加者と研究者で議論しながら分類・考察を行い、 地域の自然資本の保全・管理への戦略構築に向けた自然への投資のオプション提案を探索的におこなった。
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