本研究の目的は、以下の3つの研究課題の達成による、国レベルの社会-生態システムの将来シナリオ共有手法の実践的構築である;課題①自然資本や社会のマクロな変化を定量的にダウンスケーリングした、将来的な人々の暮らしの変容シミュレーション、②シミュレーション結果の物語形式への変換とその要諦の抽出、③社会調査による提案手法の理解促進・意思決定支援効果の測定。 今年度は、4つの社会-生態システムシナリオにおける、人々の暮らしの様子を描写した物語文と説明文(イラストあり)をアンケートモニター半数ずつに提示し、その読了効果や望ましいシナリオに関する意思決定の葛藤度を尋ねる社会調査を実施し、結果の分析を行った。調査のサンプル数は3437サンプルであり、Directed Questions Scale (DQS)によ不誠実回答者を除いたサンプル数は2120サンプルであった。先行文献の参照しながら、回答者の属性としては、基本的な社会経済的属性に加え、社会問題への関心読書量、物語指向性(理解や説明などにおいて物語を用いることが向いているかどうか)や優柔不断度、4シナリオの軸への選好を採用した。読了効果としては、文章への移入度、納得性・関心向上性・自我関与性・読み取りやすさを採用した。 分析モデルとしては、望ましいシナリオの意思決定葛藤度を応答変数、属性や読了効果を説明変数とした共分散構造分析を採用し、文章の物語性は調整変数として使用することで、物語性による読了効果および意思決定への効果を分析した。
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