研究課題/領域番号 |
19K20498
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
西嶋 大輔 福島大学, 共生システム理工学類, 講師 (00827959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 循環経済 / 製品寿命 / 買い替え行動 / 耐久消費財 |
研究実績の概要 |
本年度においては、もう1つの対象製品である冷蔵庫について動的離散選択モデルの推定を行った。エアコンと同様に、冷蔵庫についても当初は物理的耐久性の指標として平均寿命を用いる予定であったが、製品を使用する消費者に対しての長期使用に向けた政策立案も加味すべきとの観点から、消費者が製品に対して期待する寿命の長さを示す「期待寿命」をモデルに取り入れて推定を行った。また、推定された動的離散選択モデルを用いて、消費者の買い替え行動変化を通じて製品の使用期間に与える影響について分析を行った。結果から、冷蔵庫についても期待寿命が向上することで実際の製品の使用期間が延長されることが示されたが、その延長の効果はエアコンよりは小さく、期待寿命の向上による使用期間の延長効果は製品によって異なることが示唆された。この製品による期待寿命向上の使用期間延長効果の違いやその程度を明らかにした点は、循環型社会や循環経済における製品の長期使用促進に向けた政策立案における重要な知見であると考える。エアコンの期待寿命の向上による使用期間への影響に関する成果については現在学術論文として投稿を行っており、冷蔵庫についても現在学術論文としての投稿に向けて準備を進めている。 またエアコンと冷蔵庫の動的離散選択モデルから算出される製品の買い替え確率を製品ストック・フローの推計モデルへの適用を試み、そのストック・フローモデルの精緻化について検討した。結果としては、ストック・フローの推計対象期間の初年において製品の買い替え台数が過大に推計されてしまうという問題があることが確認され、この問題点に対する解決策の方向性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的離散選択モデルの推定については、エアコンと冷蔵庫の両製品について概ね完了した。また、動的離散選択モデルの製品ストック・フローの推計モデルへの適用と精緻化に着手できている。研究実績の概要で示したような課題は残っているものの、その解決の方向性についても検討できているという点も踏まえて、上記の進捗状況と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、研究実績の概要でも触れたように、動的離散選択モデルの製品ストック・フロー推計モデルへの適用とその精緻化、およびそれを用いた循環経済における製品の長寿命化政策の推進による環境や経済への影響に関する分析を行う。動的離散選択モデルの製品ストック・フローモデルへの適用については、研究業績の概要で示したように、推計の対象期間の初年における買い替え台数が過大に推計されてしまう点を改善する必要がある。動的離散選択モデル推定の際に用いたアンケート結果を基にした変数の設定をそのまま製品ストック・フローの推計モデルの際に用いたが、動的離散選択モデルから推計される平均使用年数が他の文献等で示されている平均使用年数よりもやや短い傾向にあることが確認され、そのずれが過大推計の要因になってしまったものと考えられる。今回の動的離散選択モデルでは、各使用年数における「期待寿命」の変数の設定を変化させることでその平均使用年数を修正することが可能であるため、その修正を行ったうえで製品ストック・フローの推計を試みる。また推計された製品ストック・フローの量から資源消費量や温室効果ガス排出量などの環境負荷、および雇用や付加価値といった経済的指標を算出できるような分析フレームワークを構築し、シナリオ分析を通じて製品の長期使用促進政策による環境や経済への影響について分析するとともに、その成果を学術論文として取り纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスによる影響で、学会が全てオンライン開催となったとともに、予定していた出張もキャンセルとなってしまったため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額については、主な使用先としては、製品ストック・フローの推計モデルの際に必要となる冷蔵庫やエアコンの容量別・冷房能力別の国内出荷台数に関するデータの購入費用に充てる。また、研究成果の保存や取り纏めや公表に際して、HDDなどの記録媒体の購入、学会の参加費や国際雑誌への掲載に向けての英文校正の費用などに充てる予定である。
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