本年度においては、前年度までにおいて推定を行った消費者の耐久消費財の買い換え選択に関する動的離散選択モデルを応用して、製品寿命に影響を与える政策の実施とそれによる製品寿命への影響をリンクさせた政策の環境影響評価モデルの構築を行った。また構築したモデルを用いて、エアコンをケーススタディとして、「使用時の電力消費量の改善」および「サーキュラーエコノミーの進展に伴う消費者の製品寿命に対する期待(期待寿命)の向上」の政策による温室効果ガス排出量への影響について推計した。結果として、両政策は温室効果ガス排出の削減に寄与しうるとともに両政策による削減効果の違いが、政策実施による製品寿命およびそれによる製品ストック・フローの変化を加味したうえで定量的に示された。
これまでの関連する先行研究では、政策実施と製品寿命の変化が結びついておらず別個にシナリオを置く形で政策の環境影響評価を分析していたものがほとんどであった。しかし、本研究によってその両者の関係を結び付けることで、製品寿命に関わる環境政策の効果について、その政策による製品寿命への影響を連動させたうえで分析することが可能となった。これにより、製品寿命に関わる環境政策の環境面での効果をより政策に直接的な形で提示でき、政策の有効性や複数の政策間での効果の比較をより厳密に議論することが可能となるという点で、学術的・政策的意義や重要性が高いものと考える。
この研究成果については、3月に開催された日本LCA学会研究発表会について報告を行った。また、モデルの精緻化の余地があるものの、その精緻化も含めて学術論文としての投稿の準備も進めている。
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