研究課題/領域番号 |
19K20499
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 陽大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (70829499)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地熱資源探査 / 地熱貯留層 / pH / Shadow効果 |
研究実績の概要 |
pHマッピング法は,迅速性および経済性の観点から既存地熱探査手法より優位であると考えられるが,未だ概念の提唱にとどまり,実用化にいたっていない。 本研究では,地熱貯留層位置が明確な地熱地域において,pHマッピング法による探査を実施し,その結果を精査することで概念の検証および性能評価を実施し,pHマッピング法の実用化に向けて課題を抽出するとともにブラッシュアップすることを目的としている。 これまでの研究において,pHマッピング法の実用化には「EC-pHグラフの検証」と「測定地点における集水面積評価」という2つのデータスクリーニング法が必要であることを示してきた。「測定地点における集水面積評価」はすでに確立された手法であることから,国内のあらゆる地熱地域において適用可能であるが,「EC-pHグラフ」については,これまでに検証された地域がほとんど存在しない。そのため,全国の主要地熱地域(十勝,むつ,八甲田,秋田駒,鬼首,磐梯,那須,鶴見岳,阿蘇地域)に分布する地表水(湧水,沢水,河川水,温泉水)データ 2,131 件を収集し,EC と pH の関係性について検討した。これらの地域は,国内地熱資源の多くが賦存する北海道,東北,九州地方を幅広くカバーしている。 検討の結果,すべての地熱地域においてEC-pHグラフから,pHマッピング法の適用可能性を示唆する結果を取得することができた。以上のことから,国内主要地熱地域において,pHマッピング法による貯留層位置の推定が可能であることを示唆する結果を取得することに成功した。 これらの成果をまとめ,地熱学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,pHマッピング法の実用化に向けて,「1.現地調査による性能評価」,「2.課題抽出」,「3.ブラッシュアップ」という3つの課題を軸に研究活動を進めている。 昨年度までに,「1.現地調査による性能評価」,「2.課題抽出」については一定の成果を出すことに成功しており,本年度は昨年度抽出された課題のひとつである,「EC-pHグラフの検証」について,国内主要地熱地域を対象に検討した。検討の結果,「EC-pHグラフ」は国内主要地熱地域において適用可能であり,ひいては,pHマッピング法による地熱貯留層位置の推定が,国内主要地熱地域において実施可能であることを示唆する結果を導出することに成功した。 これによって,pHマッピング法の実用化に向けて課題をひとつクリアできたものと判断した。 また,その他の課題として「貯留層位置を推定するために必要なデータ密度の定量評価」についても検討を進めており,良好な結果が得られている。 以上の点から,本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,pHマッピング法の実用化に向けた課題のひとつである,「貯留層位置を推定するために必要なデータ密度の定量評価」について検討を進めていく。pHマッピング法による地熱貯留層位置の推定において,最低限必要なデータ数や,データ間隔等について,地形学や地球統計学的手法を活用して検討していく予定である。 また,依然として,新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく,今後の情勢変化についても予想できない状態が継続している。緊急事態宣言等の発令に伴い,県境をまたぐ移動や出勤等に制限が出される可能性もあることから,既往データに基づいた複数地域での検討を進めることとしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響から,当初計画していた旅費等の消化が予定通り進まず,次年度使用額が生じた。 いまだ新型コロナウイルス感染症の拡大傾向は継続しており,今後の情勢変化についても予想できない状態が続いていることから,既存文献収集およびデジタル化作業への使用を予定している。
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